安倍首相「忖度しないコロナ」には無力だった 未知のウイルスを前にどんな手腕を発揮したか

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首相の在任中、守勢に回ったのが「もりかけ問題」や「桜を見る会」だ。野党の追及も決定打を欠いた点も否めないが、首相は正面から追及に答えようとせず、逆に公文書の改ざんや廃棄などで難局を生きながらえてきた。庶民感覚を見失った宰相には、9億5600万円の国有地を1億3400万円で払い下げることの不自然さと、それに不公平感を覚える庶民感覚を理解できなかったのかもしれない。そのことによって近畿財務局の職員が自殺したことを、首相は自分の責任だと考えたのだろうか。

その宰相を襲ったのが、得体の知れない新型コロナウイルスだった。ウイルスばかりは忖度はしてくれないし、詭弁も通用しない。おまけに政治家や官僚とは違う、科学的な根拠を重視する公衆衛生や感染症の専門家の力を借りなければならない。詭弁とは対極にあるこれらの専門家には、もちろん永田町の論理が通じるわけもなかった。首相在任中、初めて経験する事態に安倍首相も戸惑ったに違いない。

コロナ対策で、まず安倍首相が手掛けたのは、2月27日に全国の小中高校に対して行った「休校要請」だった。首相が信を置く側近の今井尚哉首相補佐官の進言を受け入れて決断したと言われている。桜を見る会などで支持率を落とした首相にとって、起死回生の一策だったのかもしれない。だが、学校が休校になれば働く親たちが窮地に追い込まれることは容易に想像できる。とくに当時は子どもが感染しても重症化に至る率は低いことがすでにわかっていた。科学的根拠に基づかなかった一斉休校は、庶民の暮らしへの配慮を欠いていた。

アベノマスクに集まった非難の嵐

防戦を強いられた首相の次の一手も、批判のターゲットとなる。アベノマスクだ。

全国的なマスク不足を解消するためのアベノマスクは、側近の秘書官の「全国民に布マスクを配れば不安はパッと消えますよ」との進言を受け入れたと言われている。当初は466億円をつぎ込むとされたが、PCR検査の殺到で機能不全に陥った保健所や地方衛生研究所の態勢整備が叫ばれていた時期でもある。「ほかにやることがあるのでは」「エイプリルフールか」などと非難の嵐に見舞われた。

【2020年9月4日9時18分追記】アベノマスクにかかわる記述に正確を期すため、一部表現を見直しました。

結局、各戸に配られる頃にはマスク不足も解消され、菅義偉官房長官が会見で「布マスクの配布により需要が抑制された結果、品薄状況が改善された」などと、根拠の脆弱な言葉が失笑を招いた。

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