ジーユー、5年ぶり「コスメ再挑戦」に抱く自信 コロナ禍でも事業拡大を推し進める逆張り戦略

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ただ、ジーユーと言えば、かつてリーマンショック直後に「990円ジーンズ」を投入するなど、安売りのイメージが先行しがちだ。無印良品や新興ブランドの競合がひしめく中、ファッションとのセット提案やSNSと連動させた発信の工夫で、価格以上のブランド価値を十分伝えられるかが成否のカギを握る。

また、新型コロナウイルスの感染拡大により、外出先でもマスクを着用する時間が長くなった影響で、リップなどメイクアップ商品の需要は足元で急減している。ジーユー社内では1年ほどかけてコスメの商品開発を進めてきたというが、新型コロナ問題が顕在化した後も、プロジェクトを中断することはなかった。

売れるという確信を持っている

土上氏はこのタイミングでの発売に挑む理由を「コロナ禍では、リモートワークの普及に伴いオンラインでも映えるメイクや、手に取りやすい価格や肌に優しい商品への需要が高まっている。業界のニーズが変化している時は『こんなアイテムが欲しかった』という声に応えられるチャンスでもある」と説明する。例えばマスクを常に装着していて唇が乾燥してしまうケースを想定し、リップは高い保湿性と気軽に塗れる手軽さを追求したという。

ジーユーの2019年8月期の売上高は2387億円(前期比12.7%増)に達し、2020年8月期も新型コロナの影響はありながらも微増収を死守する計画だ。土上氏はコスメでの新展開について、「コロナ禍でもこのアイテムなら売れるという確信を持っている。コスメをしっかりと伸ばしてジーユーの柱としていきたい」と意気込む。

コロナショックの直撃により、多くのアパレル企業は出店や新規事業への投資を控え、コスト圧縮を最優先する状況が続いている。コロナ禍でもあえて事業拡大路線を強める「逆張り」姿勢は、ジーユーが国内外で一段とシェア拡大を進めるうえでも大きな岐路となりそうだ。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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