テレワーク中の指導がついパワハラになる理由 会社への不平不満が生まれる職場のカラクリ

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ミクロシフトは、個人の局所的要因による労働価値の変化です。例えば、その人のキャリア段階によって労働価値も変わります。新入社員のうちは「成長」や「学習できる機会」を重視していたが、ある程度仕事が回せるようになってくると「成果」や「給与」などへの欲求が高まる。さらにマネジャーになると、自分の成長や報酬への欲求は一段落し、「育成」「働きやすい環境」を重視するようになる……といった変化は比較的多く見られます。

労働価値は、本人の健康状態、身体的・精神的コンディション、生活環境によっても変化していきます。結婚・出産・育児・介護などにより、仕事とプライベートの重要比率に変化が生じ、それまで「成長」を求めていた社員が「働きやすい環境」を求めるようになる、などが顕著な例です。

このように、同じ人でも、状況の変化によって労働価値が大きくシフトしていくことがあります。その人自体が変わっているのではなく、状況によって大切にしたいもの、求めるものが自然に変わっていくのです。

だからこそ、会社側が社員の価値観を簡単に決めつけ、施策を行うことは危険です。人それぞれ労働価値が異なり、しかも変化するという前提を把握せず、施策ばかりを追いかけると空振りするというのはこういった理由があります。

細かすぎる指導がパワハラになることも

では、マクロシフト・ミクロシフトによっていつの間にか拡大していた、社員が求めるものと会社が与えられるレベルの“差”を埋めるには、どうすればいいのでしょうか?このギャップによって発生してしまった不平不満といったマイナス感情への解決策について、テレワーク下でのよくあるケーススタディーを用いて考えてみましょう。

ケーススタディー
限度を超えるとただの窮屈―マイクロマネジメントによるマイナス感情の蓄積―
企画職・Bさん(27歳女性)

2カ月前に企画部に異動。自分で考えて働ける“自主性”があるタイプ、Bにとって企画職ははじめての経験。部下の仕事を細かく見ている、ということで社内でも評判の上司Zの下で働くことになった。

Zは評判どおりで、部下からの報告をしっかりと聞いたうえで具体的な指示を出してくれるため、やるべきことが明確になり、Bは働きやすくなったと感じていた。が、コロナウイルスの影響でテレワークが始まると、Zの指示がさらに細かくなっていった。

Bは次第に業務や報告内容を細かく決められることが精神的圧迫になり、働きづらさを自覚するようになった。それが半年ほど続き、仕事のやる気が低下。気持ちの落ち込みも自覚するようになり、「干渉が行きすぎている。これはパワハラじゃないか?」と思うようになった。

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