納期遅れ相次ぐ「欧州式」鉄道車両開発の弊害 共同開発からメーカー主導への移行が生んだ
「制限付きの認可」に関する詳細は、ドイツ鉄道もメーカーのシュコダも一切明かしておらず、EBAもコメントをしていないため、原因は不明のままである。
ここからは筆者の推測の話となるが、ミュンヘン―ニュルンベルク間以外で暫定的に使用するという話が出ていたことから、最高速度に制限がかけられたのではないかとの仮説が立てられる。南ドイツ地域の多くの路線は、最高速度が140~160キロ程度であるため、もし最高速度に制限が掛けられたとすれば、高速新線での運転は無理でも、他の路線で暫定的に運行し、様子を見ながらトラブルの解消を待つ、という考えもありうるだろう。
ただ、とにかくドイツ鉄道としては、そのような中途半端な対応ではなく、完全な状態での引き渡しを求めており、あまりに長引くようなら、何らかの補償、もしくは契約自体の破棄も辞さないという構えだ。
一時は車両が消息不明に
車両については、少なくとも2018年10月頃まではドイツ国内で頻繁に試運転が目撃されていた。だが、その後は見かけることもなくなり、一時は消息不明となっていた。
2019年5月、筆者はチェコのオストラヴァにある、シュコダの客車工場を見学する機会に恵まれた。残念ながら構内の撮影はNGだったが、そこで目にしたのは、前年までドイツで試運転をしていたであろう、くだんの客車が分解されて一から組み直されている姿であった。
それが組み立て中の新車ではなく一度完成した車両をばらしたものであるとわかったのは、ドイツ国内で試運転中に被害に遭った落書きが車体に残っていたからであった。通常、一度出荷した車両を大規模に分解はしないので、よほど大きな手直しが必要だったと推察される。
その後はまた消息不明となったが、今年7月にドイツの鉄道ファンが同国内で試運転する車両を目撃したことが話題となった。画像ながら、1年2カ月ぶりに見た姿であった。
そしてこの8月末、筆者はチェコ国内の試験場であるヴェリム試験線を訪れ、そこで試運転中の車両を撮影することに成功した。留置線の奥からゆっくりと姿を現すと、そのまま森の中の小周回線へ移動、時速20~30キロ程度の非常にゆっくりした速度で発進と停止を繰り返しながら、周回を重ねていた。
この車両の行く末については当事者のドイツ鉄道もシュコダも相変わらず口を閉ざしており、どのような目的の試運転かは筆者の知るところではなく、いまだ先行きは不透明のままである。
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