納期遅れ相次ぐ「欧州式」鉄道車両開発の弊害 共同開発からメーカー主導への移行が生んだ
日立製作所が買収し、現在はイタリア現地法人の日立レールS.p.Aとなったアンサルドブレダも、その影響を受けた1社と言えよう。
アンサルドとブレダという別々の会社だった同社は、これまで数々のイタリアを代表する名列車を生み出してきた。先頭に展望席を設け、日本の小田急ロマンスカーや名鉄パノラマカーにも影響を与えたと言われるETR300型はもちろん、イタリアの高速列車フレッチャロッサの初期型である、ETR500型の開発にも深く関わっている。
そんなイタリアの名門だが、日立へ買収される直前、残念ながら大きな失敗を犯している。デンマークとオランダという、これまで車両を納入した実績がなかった国々の鉄道と車両納入契約を結んだものの、納期が遅れたうえに、運行開始後もトラブル続きでまともに走らなかったのだ。
オランダに納入した中高速列車V250型は、運行開始からわずか3週間で運行停止を余儀なくされ、そのまま二度と運行が再開されることはなかった。原因は複数あったが、最大の理由は寒冷地の対策が十分ではなかった点だ。報告書によると、運行中に氷が警笛へ付着して鳴らなくなったり、車体から落ちた氷の塊が床下へ跳ね返り、走行装置が運行不可能なほどのダメージを負ったりしたことなどが記載されている。
氷の付着で警笛が鳴らなくなるとは、聞けば非常にお粗末な話ではあるが、それまで南国である自国の車両を中心に製造してきたメーカーだけに、冬場には連日氷点下となる寒冷地向け技術のノウハウが豊富ではなかったという点は否めないだろう。実際、返品されたV250型電車はイタリア国内に活躍の場を移したが、一切トラブルなく順調に運行を続けている。
いくらイタリアの名門とは言え、こうしたトラブルが続けばイメージダウンとなるのは必至で、しかも全車両が返品となった上に賠償問題にも発展した。日立の買収によってようやく持ち直し、今では日立の欧州大陸拠点となったことは記憶に新しい。
性能だけでは測れないリスク
車両開発がメーカー主導になったことも、なかなか認可が下りず、納期の遅延が発生する要因の一つだ。各国の国鉄とメーカーが共同開発していた時代は、運行する路線にマッチしたものを時間をかけて開発していたのだから、不具合が発生する確率も一部の試験車両を除けば格段に低かったはずだ。
メーカー各社が欧州各国の条件に最大公約数で当てはまる車両を開発し、TSI認証を受けたといっても、各国には気象条件など、性能では測れない地域特有の環境もある。実際に走らせてみるまで、如何なるトラブルが発生したとしても不思議な話ではない。
地元企業からの支援により中国中車(CRRC)からの買収を逃れ、今も堅実な経営を続けるシュコダ。だが今回のドイツの案件で評判を落とし、再び経営に暗雲が立ち込めることがないよう、一刻も早くトラブルを解消し、新型車両がデビューできることを願ってやまない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら