孤立や生活困窮を社会的に救う手立てはあるか 加藤勝信厚労相「社会的システムを作り上げる」

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経済活動は私たちの暮らしと生活を支えており、緊急事態宣言下のような状況を長く続けるわけにはいきません。失業者が増えると自殺者が増えるという指摘もあります。感染防止と経済活動のバランスをとりながら進めていくことが大切です。

近藤:失業者や不安定雇用者など、社会的に弱い立場にある方々がより厳しい状況に陥っていますね。営業自粛のために、相談する場所や機会が縮小されています。支援する側も、周囲と接触する場がないため、以前にも増して支援すべき人を見つけ出すのが難しくなっています。

加藤:ウィズコロナの時代では、地域住民のみなさんそれぞれが、支え、支えられて、お互いの生活を維持し、より高めていける状況を進めていくための手はずを一層進めていかなければならなりません。まさに、これまでも進めてきた「地域共生社会」の実現に向け、さらに取り組んでいく必要があります。

ウィズコロナの暮らしは、感染防止と経済活動、社会活動に大きく関わってくることをしっかりと踏まえ、その中で生活を、そして命を守っていくことが問われています。

医師が生活困窮を発見してもできることは限られる

近藤:私も医師として診療しているなかで、診療の場というのは、生活困窮を発見する場でもあると感じます。しかし、医師は患者の仕事のことなど生活にまで立ち入ることはできない。生活困窮が原因で病気が悪化したり、糖尿病などの病気のコントロールができなかったりする患者さんに出会うとき、医者としてやれることの少なさに気づき無力感にさいなまれることがあります。

ウィズコロナの今、そのような患者さんは一層厳しい状況にありますが、加藤大臣が顧問を務める「明るい社会保障改革推進議員連盟では、「社会全体で病気の予防や健康づくりを推進する」ことを提言し、とりわけ「社会的処方」の取り組みを推進するべきと報告しています。社会的処方とは何でしょう。またどのようなことを期待していますか。

加藤:さまざまな病気、なかでも生活習慣病や精神的な病気は、ご本人の社会生活上のさまざまな環境や課題が影響しています。どんなに医療的なケアをしても、ご本人の社会生活上の問題や課題の解決が伴わないと、なかなか改善が図られない場合があります。そういった意味では、そうした病気を抱える方を生活面から支援していくことが非常に大事になります。

次ページ孤立や生活困窮を“治療”する「社会的処方」
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