米大統領選「ロシア介入」は本当に防げるのか セキュリティ予算をコロナ対策に回す州も
また今回の大統領選挙で、ソーシャルメディアなどを使った偽情報の拡散に加えて、サイバーセキュリティ関係者がもう1つ心配しているのが、金銭目的の犯罪者が仕掛ける身代金要求型ウイルスによる選挙インフラの感染と選挙妨害である。たとえ選挙が妨害されなかったとしても、身代金要求型ウイルスによるサイバー攻撃が行われただけで、選挙に対する国民の信頼が失墜してしまうのではないかと関係者は懸念している。
ラスベガスで毎年8月に開かれる大規模な国際サイバーセキュリティ会議「ブラックハット」に、今年登壇した国土安全保障省傘下のサイバーセキュリティ・インフラ防護庁のクレブス長官は、身代金要求型ウイルスによる妨害への懸念を率直に認めた。そして、被害を防ぐための対策と、万が一感染してしまった場合に備えたバックアップ対策を全米で進めている。
投じた予算はなんと400億円以上
実際、ここ数年アメリカの州政府や地方自治体への身代金要求型ウイルスによる被害が立て続けに発生している。オーストリアのサイバーセキュリティ企業「エムシソフト」は、2020年前半だけでも60件検知した。
この2年間、身代金要求型ウイルスの被害は世界的に激増、とどまるところを知らない。アメリカのサイバーセキュリティ企業「コヴウェア」によれば、2020年第2四半期の平均支払額は、第1四半期より60パーセント増えて17万8254ドル(約1886万円)になり、感染してから復旧するまでの平均期間は、第1四半期より7パーセント伸びて16日間となった。
アメリカでは、2017年、国土安全保障省が医療、上下水道、通信、金融、エネルギーなどに加え、選挙インフラを重要インフラに指定、選挙に使われるITシステムの防御の強化を続けてきた。連邦議会が2018年に選挙のサイバーセキュリティ予算として認めた額は、3億8000万ドル(約402億円)に及ぶ。
「選挙インフラ」には、選挙関連のデータやデータの保存場所、ウェブサイト、ソーシャルメディアのアカウント、有権者の登録データベース、電子投票機、票の集計・監査システムなどが含まれる。
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