JR西の豪華寝台「瑞風」、長すぎる運休のナゾ 検査含め1年休み、沿線の人々と乗務員の思いは

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JR西日本のディーゼル車のエンジンは、約750台すべてを後藤総合車両所でメンテナンスする。編成ごと入場する場合もあればエンジンだけ運ばれてくることもある。西日本エリアの第三セクター所有の気動車も担当している。同車両所で企画業務などを統括する髙梨真也助役は「入場する車種が非常に多いことが後藤総合車両所の特徴の1つ」と説明する。

後藤総合車両所で要部検査中の瑞風(記者撮影)

そのなかでもやはり瑞風の扱いは異例だ。入場するだけでも数日がかりの作業が必要となった。通常の10両編成のままでは入場できないため、7月上旬に普段拠点としている大阪から、いったん後藤の約70km西にある同車両所出雲支所(島根県出雲市)に回送。運転台がある1・10号車と2~5号車の6両編成に組み替えて後藤に回送、1・10号車だけが出雲支所に戻り、今度は6~9号車を連れてくるという手順をとった。

車両所に入場すると車体と台車を切り離して、場内用の仮台車に履き換える。同車両所で車体の上げ下ろしをするクレーンが対応できるのは40tまで。瑞風プロジェクトチームの菊川真吾係長は「瑞風には60tぐらいの重量の車両があるので、1、5、6、7、10号車はリフティングジャッキで持ち上げる」と説明する。ほかにも寝台特急「サンライズエクスプレス」の電動車や「はまかぜ」の車両にもジャッキを用いるという。

瑞風に用意した設備

車両所内は瑞風のために用意した設備がある。塗装を何層にも重ねるため、ロボットが作業する自動塗装装置を導入した。また車両所内を移動させるトラバーサーは、瑞風のような重たい車体を乗せるときに中央がたわまないようにキャッチャーと呼ぶ橋桁のような部材を地面に設置した。

後藤総合車両所の瑞風プロジェクトチーム(記者撮影)

要部検査をどのような内容とするのかは、デビューした3年前から入念に検討されてきた。瑞風の検査の間は、車両の入場が集中しないよう配慮する必要もある。瑞風は外観や内装がほかの車両とは異なる点が多いため、髙梨助役や菊川係長ら瑞風プロジェクトチームの担当者は特別気を使ったようだ。

プロジェクトチームのメンバーで車両管理係の曽良訓弘さんは「瑞風は検修現場からの問い合わせが多く、品質への高い意識が感じられる。外部からも注目されているので試運転などの安全面に気をつけたい」、井田憲太郎さんは「瑞風には営業開始前の性能試験から関わってきた。当時のようなきれいな状態で出場させたい」と話していた。

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