JR西の豪華寝台「瑞風」、長すぎる運休のナゾ

検査含め1年休み、沿線の人々と乗務員の思いは

瑞風の長期にわたる運休期間中、これまで沿線で乗客を出迎えてきた人々はどんな思いを抱いているのだろうか。鳥取県岩美町の東浜は、2泊3日周遊コースで最終日に立ち寄る観光地。山陰海岸国立公園の佳景はもちろん、5月から9月の間は浜での地引き網体験が好評だ。

東浜駅は無人駅だが、瑞風の停車に合わせて天井が鏡面になったゲートの駅舎に改築。リニューアル完成の記念式典には鳥取県の平井伸治知事や地元選出の石破茂衆院議員も駆け付けた。

アルマーレの飯田直史シェフ(記者撮影)

昼食会場となる「AL MARE(アルマーレ)」は海を眺めながら食事ができるレストランで、地元の海産物を使った料理が自慢だ。保育所だった建物を改修し、瑞風や東浜駅の駅舎と同じく、浦一也氏がデザインを監修した。瑞風の乗客には地引き網で獲れた魚を提供することもある。同店の飯田直史シェフは東京の出身で、イタリアで経験を積んだ後、2019年6月に着任した。

東西に長い鳥取の海岸の東端にあたる同地にも新型コロナが影を落としている。飯田シェフは「夏の繁忙期のランチは連日満席のはずだが、今年はまったく(ない)。海開きをしていないので海水浴客も少ない」と話す。感染拡大への警戒で帰省する家族連れが減ったという。瑞風の運行再開に向けては「僕が岩美町のよさを見つけ、瑞風のお客さんに発信したい。四季によってメニューを変えることでより季節らしさを出していきたい」と語る。

「何もない田舎」が一変

東浜を訪れた瑞風の乗客には、おそろいの青いはっぴを羽織った地元有志よる「東浜音頭」が披露される。東浜音頭は半世紀前から運動会や地蔵盆の際に踊られてきた。少子高齢化などを背景に一度は途絶えたが、瑞風の立ち寄りに合せて復活させたものだ。

瑞風が立ち寄る東浜駅。天井が鏡面になったゲートがある(記者撮影)

「風光明媚な海岸があるだけの、なーんにもない静かなさびしい田舎だった」――。おもてなしを担う「東浜瑞風会」の浜口丈夫会長は瑞風の立ち寄りが決まる前の東浜の様子をこう表現する。数十年前までは民宿がたくさんあって京阪神からの臨海学校の生徒たちでにぎわっていたという。

瑞風が東浜駅に到着するのは金曜日の朝9時ごろ。瑞風会のメンバーは8時に公民館に集合して練習した後、駅に並んで待機する。台風などによる運休のとき以外は、寒かろうが暑かろうが、欠かすことなく続けてきたという。「見送りは駅のホームで瑞風が見えなくなるまで旗を振ります」(浜口会長)。

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