一部科学者が集団免疫は5割で十分と考える訳 集団免疫をめぐって各国で議論が噴出している
だがブリトンらのモデルからは、集団免疫が得られた可能性は否定できないように思える。中には10〜20%が免疫を持つだけで集団免疫は成立するし、国単位ではすでに獲得している例もあるのではと説く専門家もいるが、異論は多い。
「日常の行動が正常に戻るのはまだまだ先だ」と言うのは、イェール大学公衆衛生大学院の数理疫学者、バージニア・ピッツァーだ。「すべての対策をやめて平時に戻れる、もう患者数も増加しないと思うのは間違っているし、不正確だ」。
第1波で感染をまぬかれた集団や地域が第2波に見舞われ、大きな被害が出る可能性もあるとピッツァーは言う。ニューヨークにおける免疫保有者の割合は、地区によってさまざまだ。例えばクイーンズのコロナ地区の診療所では受診した人々の68%で新型コロナウイルスの抗体が確認されたが、ブルックリンのコブルヒル地区ではたった13%だった。
パンデミックはあと数カ月で終わる?
だがイギリスのストラスクライド大学の数学者、ガブリエラ・ゴメズ率いる研究チームは、特定の社会集団内でも違いが見られることを突き止めた。ベルギーやイングランド、ポルトガル、スペインでは集団免疫を獲得するのに必要な免疫保有者の割合は10〜20%と幅があるという。
「少なくともそのモデルを当てはめてみた国々では、集団免疫のハードルがそれ以上高いことを示す証拠は見つからなかった」とゴメズは言う。「パンデミックはあと数カ月しか続かないかもしれないと考えてもいいと思う」。
ほかの専門家たちからは、どのモデルにも欠陥があるようにゴメズらのモデルにも欠陥があり、実際の状況を過度に単純化しているとして、もっと慎重に判断すべきだと指摘する声が上がっている。
コロンビア大学で感染症学を研究するジェフリー・シェイマンは、ゴメズのモデルが唯一の現実的な解決策を示しているかどうかまだ判断はできないと言う。また、4カ国の間で大きな差があることにも疑問を投げかける。
「これで全部終わったかのようなふりをするのは火遊びに等しいと思う」とシェイマンは言う。
(執筆:Apoorva Mandavilli記者、翻訳:村井裕美)
(c) 2020 New York Times News Service
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