一部科学者が集団免疫は5割で十分と考える訳 集団免疫をめぐって各国で議論が噴出している
新型コロナウイルスは、ユダヤ教のプリム祭を祝おうとしていたニューヨークの正統派ユダヤ教徒が多く住む地区を襲った。ブルックリンで3月9〜10日に予定されていた仮装パレードは中止になった。
学校もシナゴーグも感染拡大を防ぐためすぐに閉鎖されたが、もはや手遅れだった。4月までに、数多くのブルックリンのコミュニティで新型コロナの感染が広がり、死者は数百人に上った。
「あまりに精神的につらくて、私の記憶の中でそこだけブラックホールのようになっている」と、看護師のブリミ・マーカスは言う。マーカスは中でも感染拡大がひどかったボローパークに住んでいる。
だが状況は大きく変わったとマーカスは言う。「みんな免疫ができたから大丈夫だという、安心感のようなものが広く漂っている」。
ニューヨークの免疫保有者の割合
それでも病院を受診する人々は何らかの症状を持っている可能性が高く、従ってコロナウイルスに感染している可能性も高いとコロンビア大学公衆衛生大学院の疫学者ワン・ヤンは言う。ニューヨークにおける免疫保有者の平均割合は21%とされる(無作為抽出で調査すればさらに低いはずだ)が、それを大きく上回るだろう、とヤンは考える。
ムンバイの研究チームは無作為に選んだ世帯を対象に調査を行った。取った方法は、4軒ごとに(そこが留守の場合は5軒目の)家のドアをノックして抗体検査のための血液を採取するというものだ。その結果、最も貧しい地区と最も富裕層の多い地区との格差の激しさが浮き彫りになった。貧しい地区では住民の51〜58%が免疫を持っていたのに、ほかの地区では11〜17%にすぎなかったのだ。
最も貧しい層の人々は非常に密な環境で暮らしており、トイレも共同だし、マスクもほとんど手に入れることができない。「こうした要因が、静かな感染の広がりに寄与している」と、調査責任者であるカスターバ病院(ムンバイ)の微生物学者、ジャワンティ・シャストリは言う。
ブルックリンやムンバイで最も感染拡大がひどかった地域であっても、集団免疫を獲得できたとか、今後の流行の心配はないといった結論に飛びつくのは時期尚早だと多くの専門家は考えている。