米軍関係者「日本に何人いるか不明」という珍妙 出入国管理は緩いのに交付税の対象に含まれる

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防衛省はどうやって、アメリカ軍施設外のエリアで暮らすアメリカ軍関係者の実数を把握しているのだろうか。同省地方協力課に取材すると、報道室を通して以下の回答があった。

「『在日アメリカ軍人等の施設・区域内外における都道府県別居住者数』に係る情報についてはアメリカ側から提供がないため、基本的には平成25年(3月31日)の数値としているが、2013年度以降の個別の部隊移駐等に伴うアメリカ軍の人数等の変動について、防衛省が知り得た範囲で、総務省に情報提供している。一般に、在日アメリカ軍人等の人数情報の更新については、外務省とも連携しつつアメリカ側から得られた情報により実施している」

しかし、記事冒頭で示したように、日本政府は国会答弁などで「2014年以降の各年の3月末時点の合衆国軍隊の構成員等の人数については、アメリカ側から(中略)情報の提供がなされていない」として市町村別どころか全体の数字も持っていないと説明してきた。ところが、実は、外務省のHPでは、アメリカ国防省HPに掲載された資料を出典として、2019年9月末時点の在日アメリカ軍の人数が明示されている。その数は5万5227人だ。

当のアメリカが公表しているのに、なぜ、日本側はアメリカ軍人の数を国民に示さないのだろうか。

(出所:外務省HP)

他国との信頼関係を理由に「黒塗り」

普通交付税の分配を担当する総務省および沖縄県に対し、交付額の算定用にアメリカ軍関係者の人数を記した公文書(過去5年分)を情報開示請求した。結果は、総務省も沖縄県も「黒塗り」。その理由を総務省は「他国との信頼関係が損なわれるおそれがあり(中略)不開示とします」としている。日本に出入国しているアメリカ軍関係者の人数も、自分たちの市町村に住む人数も、国民に伝えない。アメリカ軍人らの実態は「ブラックボックス」状態だ。

アメリカ軍施設は、横須賀基地や厚木基地(神奈川県)、岩国基地(山口県)、三沢基地(青森県)など全国に広がっている。東京の赤坂・六本木エリアには、俗に麻布米軍ヘリ基地と呼ばれる「赤坂プレスセンター」や米海軍施設の「ニュー山王ホテル」もある。折しも、この8月からは、在日アメリカ軍の駐留経費をめぐる特別協定(2021年3月まで)の見直し交渉も日米間で始まった。交渉では、トランプ政権が求めた日本側負担(思いやり予算)の増額が大きな焦点になる。

在日アメリカ軍専用施設のおよそ7割が集中する沖縄県では、この夏、在日アメリカ軍の軍人らの間で新型コロナウイルスの感染が急拡大した。彼ら彼女らは自由に国外と国内を行き来している。そうした中、アメリカ軍関係者がどのくらい各地域に居住しているか、当の地域住民は実態を知るすべがない。

情報開示請求で得た総務省の公文書。アメリカ軍関係者の人数も施設面積も「黒塗り」(撮影:当銘寿夫)

取材:当銘寿夫=フロントラインプレス(Frontline Press)

Frontline Press

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「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年5月に合同会社を設立して正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や研究者ら約40人が参加。スマートニュース社の子会社「スローニュース」による調査報道支援プログラムの第1号に選定(2019年)、東洋経済「オンラインアワード2020」の「ソーシャルインパクト賞」を受賞(2020年)。公式HP https://frontlinepress.jp

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