香港から「出て行く人たち」はどこへ向かうのか 香港人だけでなく、外国人やメディアまでも

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メディアの香港からの流出も始まっている。7月半ばには、ニューヨーク・タイムズ紙がデジタルニュース事業を韓国・ソウルに移転すると発表。ワシントン・ポストやウォール・ストリート・ジャーナルも同様のことを検討している。中国本土では何年もの間、ジャーナリストが警察にますます苦しめられており、最も声高なジャーナリストはビザの更新を拒否されている。

外国人にとって法の支配は香港の最高の資産の1つだった。香港は中国で最も安全な投資先であり、「イギリスの司法制度と同じくらい公正で効率的」な裁判所に守られていた。それは彼らが中国共産党の恣意的な決定の対象となることを防いでいた。法の支配がなくなった今、多くの外国人投資家は、部分的に、あるいは完全に香港からの転出を検討している。

「私が運営する金融ファンドの金融調査部門が中国の国有企業について批判的な分析を発表したら、私は反逆罪の疑いをかけられることになるのだろうか。この法律はあまりにも曖昧でわからない」と香港に拠点を置くヘッジファンドの責任者は言う。

シンガポールへの移住は微妙

シンガポールには英語を話す会計士、弁護士、営業担当者が大勢住んでおり、香港の金融サービスを再現することができるため、論理的に考えて投資家の逃亡先としては最適だ。しかし、シンガポール政府は香港についてのコメントを控えている。

「シンガポール人は現在、外国人を拒絶しており、シンガポール政府は中国政府との良好な関係を維持したいと考えている。この状況で、シンガポール政府が、自国を亡命する香港人のプラットフォームとして売り込みをすることはない」と、香港や東京で働き、現在はシンガポールに住んでいる外国人銀行員は言う。

一方、香港人はどうだろうか。香港の富裕層はすでに複数の国のパスポートと資産を持っているので、自分の好きな国に比較的簡単に永住権を移すことができる。難民の受け入れに寛容なカナダ、オーストラリア、アメリカのような主要な民主主義国は香港人を歓迎するだろう。

その中でも特に歓迎しているのが2人の政治指導者である。1人は台湾の蔡英文総統だ。台湾は人口2300万人の民主主義国家であり、攻撃性を増す中国の脅威に最もさらされている国である。

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