ソフトバンク「東急列車カメラ」驚きの設置場所 設置作業が単純に、4Gデータ通信で遠隔確認も

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話は5年前にさかのぼる。車内における犯罪行為の未然防止を目的に、東急は2015年3月から車内防犯カメラの設置を開始した。同年秋には200本以上の吊り革が盗難に遭うという事件もあり、東京オリンピック・パラリンピック開催を見据えて、2020年7月までに全車両に防犯カメラを設置するという目標を据えた。

ところが、新車なら製造時にカメラを搭載してしまえばよいが、冒頭に記したような理由から既存車両への防犯カメラの設置作業は遅々として進まない。

事態を打開する方法が見つからないまま2015年、2016年と年月が過ぎた。「なんとかしないと」。東急で車内防犯カメラ設置を担当する鉄道事業本部車両部の木村明課長補佐は問題解決に頭を悩ませていた。

出会いがもたらしたチャンス

2017年に入ったころ、木村氏の元に1人の人物が訪れた。現在、ソフトバンクでセキュライトのプロジェクトリーダーを務める伊藤文武氏だ。

ソフトバンクでセキュライトのプロジェクトリーダーを務める伊藤文武氏(記者撮影)

伊藤氏はソフトバンクで2014年頃から4Gデータ通信を活用したカメラサービスの可能性に着目し、後にモヤイ社のCEOとして製品を開発する渡邊亮氏らと、どうやってこの技術を事業化するかを話し合っていた。LED蛍光灯と一体化することで機器の据付工事や配線工事が不要となるといったアイデアは、この頃すでに生まれていた。

「アイデアがひらめいたきっかけは?」と伊藤氏に尋ねてみたが、「はっきり覚えていない。会話の中で出てきたのかもしれない」ということだった。画期的なアイデアが生まれるきっかけというのは、得てしてそういうものかもしれない。

2017年中に特許が取得できる見通しが立ち、伊藤氏は事業化に向けて営業活動をスタートした。とはいえ、まだ製品自体が存在していない。多くの企業に提案したが、ほとんど相手にされなかった。

その状況で唯一、話を聞いてくれたのが東急の木村氏だった。木村氏は伊藤氏の話に熱心に耳を傾けた。「それが本当にできるなら、ぜひとも協力したい」。東急にとっても事態を挽回できる起死回生のチャンスだ。

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