ソフトバンク「東急列車カメラ」驚きの設置場所 設置作業が単純に、4Gデータ通信で遠隔確認も

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コストや期間が短縮されることだけがメリットではない。木村氏は4G通信による遠隔操作が可能という点にも惹かれた。

東急が採用している防犯カメラは、撮影した映像を確認する際には当該車両のカメラからSDカードなどの記録媒体を抜き出して、事務所に持ち帰って専用パソコンで撮影映像を読み出すという手間がかかる。

「アイ・オー・チューブ」を開発したMOYAI(モヤイ)社の渡邊亮CEO(記者撮影)

東急の路線はほかの鉄道会社の路線とも相互乗り入れをしているため、田園都市線を例に取れば、最も遠方の場合、南栗橋にある東武鉄道の車両基地まで記録媒体を取りに行くという1日がかりの仕事になる。もし4Gによる遠隔通信を使えば、作業は格段に効率化される。

話は少しずつ具体化し、伊藤氏と渡邊氏は実際の車両を見学し、現場の担当者から技術的な課題をヒアリングした。走行中の振動に耐えられるか、画角をどのくらいにすれば、車内全体をカバーできるか、重量はどの程度まで許容できるか。こうした課題を少しずつクリアして、製品化に向けて仕様を少しずつ固めていった。

2019年秋から正式導入、今年7月に完了

2019年7月、全車両に防犯カメラを設置する期限である2020年7月まで残り1年と迫った。この時点で防犯カメラが設置された車両は全体の3分の1にすぎなかった。このペースでは、全車両に設置が完了するのは2年半かかるという。

しかし、大井町線の営業車両に試作品を搭載して実施した試験も無事終わり、木村氏は期限内に全車両に防犯カメラが設置できると確信していた。

2019年11月、導入が正式に決まった。1両に3~4個が設置されるので、数千個の製品を用意する必要がある。準備が整った今年4月から設置作業が始まり、予定どおり2020年7月25日に全車両への防犯カメラ設置が完了した。

蛍光灯と一体化した防犯カメラはJR東日本の一部の路線で先行して採用されたが、4G通信を活用するという点では、「鉄道業界初」と、東急の担当者は胸を張る。

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