利便性で他県を圧倒、福岡のご当地鉄道事情 通勤通学から観光まで路線ネットワークが充実

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いずれにしても、九州各地を旅しようと思えば、まず博多駅にやってくればなんとかなるというわけだ。実際、筆者も昨年九州の鉄道をあちこち取材で回ったが、博多に拠点を置くことが多かった。さすがに宮崎となると「にちりんシーガイア」に乗っても約5時間半と遠くて難儀するが、それ以外の主要都市には新幹線や特急を使えばあっという間にたどり着く。

熊本は新幹線「みずほ」で約30分。鹿児島ならば博多―鹿児島中央間は約1時間20分だ。長崎へは「かもめ」に乗って約2時間、大分も「ソニック」で同様に約2時間。それぞれの街をたっぷり楽しもうと思うと不足するが、いくつかの所要を済ますくらいであれば日帰りでも十分だ。すべての列車を数えたわけではないが、博多駅を出発する在来線特急の本数はおそらく日本一。九州随一のターミナル・博多駅は、まさしく九州各地へのハブとしての役割を持っているのである。

3つの点で高い利便性

このように、福岡県の鉄道は空港と福岡市の中心市街地を結ぶ地下鉄や西鉄バスを中核とする充実の福岡市内交通、4つの地方を巧みに結んで全域をまとめ上げる県内交通、そして九州全域へのネットワークの起点という3つの点で高い利便性を誇っているといえる。

ほかにも北九州市内にはかつての西鉄北九州線の後継的存在の北九州モノレールが走っていたり、平成筑豊鉄道に古(いにしえ)の炭鉱路線の風情をみたり、通勤通学からローカル線の旅までその充実ぶりは目を引くばかりだ。

香椎線を走る蓄電池電車「DENCHA」(筆者撮影)

そもそも九州の鉄道は1889年に博多―千歳川仮駅間で開通したのに始まる。国の重要文化財にも指定されている門司港駅は九州鉄道記念館が隣接する観光駅として存在感を放ち、九州の鉄道の歴史も支えているのだ。

さらに香椎線や若松線(筑豊本線若松―折尾間)には蓄電池電車「DENCHA」が走るなど、最先端の鉄道技術を垣間見ることもできる。

鉄道ネットワークの利便性は、整っていれば整っているほどそれを意識することはないものだ。が、少なくとも福岡の人気の秘密の一端に、こうした鉄道事情があることは間違いないだろう。

鼠入 昌史 ライター

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そいり まさし / Masashi Soiri

週刊誌・月刊誌などを中心に野球、歴史、鉄道などのジャンルで活躍中。共著に『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社)。

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