「社会貢献するカリスマ経営者」ベニオフの素顔 会社は「価値観」で成長するかしないかが決まる

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私はこれまでグローバル企業数社の日本法人に在籍してきましたが、これからの時代は、その会社の価値基準、アイデンティティーがいかに明確になっているかがカギになると見ています。

グローバル競争が厳しくなるにつれて、お客様も、その会社の価値観、企業文化、発信しているメッセージを吟味して、一緒に仕事するかどうかを決めるということが増えてきました。

日本ではスタートアップの若い起業家だけでなく、大企業も新たなメッセージングを出すという動きが見られるようになっています。やはり、大企業や古い企業が変わることは、社会に対して大きなインパクトを与えます。今後は世代交代の流れとともに、会社としてのバリューを強く発信する時代へと変化していくのではないかとも感じています。

新型コロナによって、何事もゼロベースで考えなければならない時期にもなりました。今後は、どの会社も、自社の価値基準をいかに明確にメッセージしているか否かで、需要が高まり急成長する会社と、成長できず立ちゆかなくなる会社とで、二極化されていくことになるでしょう。人材の流動性も、その二極化の状況のなかで、急速に高まっていくはずです。

そうした流動性の高い状況のなかで、経営者が、いかに広く業界や社会構造全体を見渡すことができるかによって、業界をまたいでの協力ができるかなどが試されていくことになるのではないでしょうか。例えば、企業が中心となって、社会において人材再教育の場をつくることができるかどうか、などです。

企業が社会に対してどのように貢献していけるのか。どんな役割を果たせるのか。国や地方自治体とも一緒になって、人口減社会を最適化できるのか。社会に対して企業が積極的にコミットしていく姿、それこそが、これからの社会に求められるものになるでしょう。

マインドフルネスの思い出

最後に、ベニオフさんと私の貴重な思い出を1つご紹介します。私がセールスフォースを退職しようとしたとき、理由を言っても、彼は「納得できない。おまえは自分自身がわかっていないんじゃないか」と言って、私をハワイへ瞑想に連れていってくれたのです。そのとき、彼から「本当の答えは自分の中にある」と言われました。

マインドフルネスはベニオフさんやセールスフォースの根幹だと思います。「自分が日本に住んでいたら、毎週末京都に行く。京都ほど瞑想に向いている場所はない」と言っていました。

こうしたリフレッシュは、事業の構想に入っていたと思います。彼にとってつねに、大事なものとは何かを意識することに役立っていたのではないでしょうか。

これからは、企業・NPO・政府・行政など社会を構成するあらゆる組織や団体が、売り上げや利益、キャッシュなどを指標とするのではなく、いかに顧客中心であるかを指標としていくとてつもない時代が、本格的に到来すると思っています。

あのヒリヒリするようなプレッシャーを与えてバリューとともに成長を探求していくベニオフさんと同時期を過ごしたことは、得がたいものとして、今も私の中に強く残っています。

福田 康隆 ジャパン・クラウド・コンピューティング株式会社 パートナー

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ふくだ やすたか / Yasutaka Fukuda

1972年生まれ。早稲田大学卒業後、日本オラクルに入社。2004年セールスフォース・ドットコムに転職。翌年、同社日本法人で専務執行役員兼シニアバイスプレジデントを務めた後、2014年マルケト代表取締役社長として日本法人の設立にかかわる。2019年買収により、アドビシステムズ専務執行役員マルケト事業統括に就任。2020年1月より、ジャパン・クラウド・コンピューティングのパートナーおよびジャパン・クラウド・コンサルティングの代表取締役社長に就任。著書に『THE MODEL――マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』(翔泳社)がある。

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