「社会貢献するカリスマ経営者」ベニオフの素顔 会社は「価値観」で成長するかしないかが決まる

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セールスフォースは、ほかのIT企業がカバーしなかった中堅のマーケットを、プロセスを重視した科学的な手法で取りに行くとともに、しっかりしたプランニングで大手の顧客を獲得して土台を築いたという部分があります。

そしてその一方で、マーク・ベニオフ本人によるPRやブランド作りが非常に大きな効果を発揮しているとも思います。

有名なIT企業はたくさんあっても、CEOの名前や顔が思い浮かぶ会社はそう多くありません。その中でベニオフさんは、自らが出てきて、しかも会社の製品ではなく、バリューや価値基準を開示しているのです。彼自身が会社を体現している存在なのです。

『トレイルブレイザー』では、セールスフォースにとって社会貢献がいかに大きなバリューであるかがよく描かれています。私自身、アメリカ本社への入社初日からは、サンフランシスコのホームレスの人々のために、リンゴなどの食料を袋詰めして配るということを行いました。

実は、当時の私は、ボランティアには消極的でした。しかし、会社を通して何度か参加したことで、考え方が変わったところもあります。

あるときは、保育施設の引越しを手伝ったのですが、施設の人は女性ばかりで、重い荷物も多く、大変そうでした。しかし、セールスフォース社員数名が手伝うことで、半日で終わらせることができ、とても喜んでもらえたのです。

そのとき、「ああ、人に貢献できたんだ」と実感しましたし、幸福感とは何なのか、人は何を求めて働いているのか。「人が生きる理由」とは何なのか、を気づかせてくれたのです。

会社がボランティア活動をプログラム化していなければ、あのような機会も得られなかったと思いますし、非常に意義のある体験だったと思っています。

飽くなき成長が可能な一貫したカルチャーとバリュー

私が在籍した2004年から10年間のセールスフォースは、急成長の時期でもあり、非常に厳しいプレッシャーの連続でした。毎月毎月決算が続くようなあの当時のスピード感、成長への飽くなき挑戦は、私の知る限り、どこを探してもないと思います。

しかし、その時代においても、すでに「カスタマーサクセス」というバリューは根本にありました。

つねに、成長のための成功ではない、自分たちが大きくなれば、製品開発もできるようになり、顧客が成功し、幸せになれるのだという「みんなの成功」を求めるという意識が明確だったのです。

長く事業を続けられる、社員が飽くなき成長に向かって頑張れるカルチャーがしっかりしていたのだと思います。

今ではフォーチュン誌で「最も働きたい企業」「世界で最も称賛される企業」などに選ばれる会社となりましたが、ずっと以前から一貫していて、いい会社だと私は思います。「1-1-1モデル」も創業当初からありましたし、当時からすでに社会貢献専任の人もいました。

成長してからそういうことを言い始めたのではなく、最初からずっと一貫していることにこそ意味があります。「カスタマーサクセスか、グロースか」の価値基準が明確だからこそ、企業文化が形成され、社員のポテンシャルが引き出され、新しい人を引き入れる魅力につながっているのです。

一方で、その過程には当然、ビジネスをドライブさせるための厳しさもある。この複合的で一貫した姿こそが、ベニオフさんから学ぶべき部分だと思います。

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