「社会貢献するカリスマ経営者」ベニオフの素顔 会社は「価値観」で成長するかしないかが決まる
初めてお会いしたのは、2003年、私が日本オラクルでロサンゼルスに駐在していた頃です。当時、オラクルの人間にとっては、カリスマといえばその創業者ラリー・エリソンしか思い浮かばないものでしたが、ベニオフさんと対面してみると、まずはその体の大きさも相まって、存在感の強さを感じました。
そのとき、ちょうどベニオフさんはメディアの取材を受けており、私はそれが終わるまでそばで待っていたのですが、その話の内容にもうならされました。
当時のIT業界は、ハードウェアもソフトウェアもユーザーがすべて購入して、自前で構築するという仕組みが一般的でしたが、ベニオフさんは、今後は電気やガス、水道と同じユーティリティーとして使える仕組みを提供する、そして、それがユーザーのためにもなるんだというビジョンを語っていました。
クラウド隆盛の2020年の今となっては当たり前の話です。しかし、当時は「そんなことが本当にできる未来がくるなら、すごい話だな」と興奮しながら聞いたのをよく覚えています。
「Think Big」最初から世界を狙え
同じクラウドサービスにも、会計や人事システムなどいろいろな選択肢がありますが、セールスフォースは、営業支援、顧客管理からスタートしました。
この理由を後に聞いたところ、「会計や人事は各国でレギュレーション(規制や規格)が異なるので国際展開が難しい。しかし、顧客情報や営業なら世界共通だ」と。つまり、彼は最初からアメリカ国内だけではなく、世界の市場を見据えていたわけです。
2004年の上場直後の頃の言葉も印象に残っています。当時はまだ顧客が6000社ほどでしたが、ベニオフさんはペットの犬を連れて会議室にやってきて、「僕の目標は、顧客数10万社にすることだ」と語ったのです。
その瞬間、私も含めてみんなが「そんな荒唐無稽なことができるわけないだろう」と思いました。しかし、それから長くかからずに、彼はその目標を達成してしまったのです。
とにかく「Think Big」というか、視点が高いのです。ベニオフ本人が「できる」と本当に信じている。その信じる力がとても強いのだと思います。
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