「社会貢献するカリスマ経営者」ベニオフの素顔 会社は「価値観」で成長するかしないかが決まる

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初めてお会いしたのは、2003年、私が日本オラクルでロサンゼルスに駐在していた頃です。当時、オラクルの人間にとっては、カリスマといえばその創業者ラリー・エリソンしか思い浮かばないものでしたが、ベニオフさんと対面してみると、まずはその体の大きさも相まって、存在感の強さを感じました。

福田康隆(ふくだ・やすたか)/ジャパン・クラウド・コンピューティング パートナー、ジャパン・クラウド・コンサルティング代表取締役社長。1972年生まれ。早稲田大学卒業後、日本オラクルに入社。2004年セールスフォース・ドットコムに転職。翌年、同社日本法人で専務執行役員兼シニアバイスプレジデントを務めた後、2014年マルケト代表取締役社長として日本法人の設立に関わる。2020年1月より現職。著書に『THE MODEL』(翔泳社)がある(写真:福田康隆氏提供)

そのとき、ちょうどベニオフさんはメディアの取材を受けており、私はそれが終わるまでそばで待っていたのですが、その話の内容にもうならされました。

当時のIT業界は、ハードウェアもソフトウェアもユーザーがすべて購入して、自前で構築するという仕組みが一般的でしたが、ベニオフさんは、今後は電気やガス、水道と同じユーティリティーとして使える仕組みを提供する、そして、それがユーザーのためにもなるんだというビジョンを語っていました。

クラウド隆盛の2020年の今となっては当たり前の話です。しかし、当時は「そんなことが本当にできる未来がくるなら、すごい話だな」と興奮しながら聞いたのをよく覚えています。

「Think Big」最初から世界を狙え

同じクラウドサービスにも、会計や人事システムなどいろいろな選択肢がありますが、セールスフォースは、営業支援、顧客管理からスタートしました。

この理由を後に聞いたところ、「会計や人事は各国でレギュレーション(規制や規格)が異なるので国際展開が難しい。しかし、顧客情報や営業なら世界共通だ」と。つまり、彼は最初からアメリカ国内だけではなく、世界の市場を見据えていたわけです。

2004年の上場直後の頃の言葉も印象に残っています。当時はまだ顧客が6000社ほどでしたが、ベニオフさんはペットの犬を連れて会議室にやってきて、「僕の目標は、顧客数10万社にすることだ」と語ったのです。

その瞬間、私も含めてみんなが「そんな荒唐無稽なことができるわけないだろう」と思いました。しかし、それから長くかからずに、彼はその目標を達成してしまったのです。

とにかく「Think Big」というか、視点が高いのです。ベニオフ本人が「できる」と本当に信じている。その信じる力がとても強いのだと思います。

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