国民民主・玉木代表はなぜ分党にこだわるのか 突然の新党不参加表明はカネと組織が狙いか

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合流反対・慎重派を束ねるために必要なのが、分党後の新党を運営する資金と組織の確保だ。玉木氏の分党決断の裏には、「国民民主を受け継ぐ『分割政党』として、資金と組織の温存を狙うしたたかな計算がある」(立憲民主幹部)とみられている。玉木氏も12日の民放番組でその点を質されると、「ルールを踏まえて対応する」と答えるにとどまった。

立憲民主は希望の党から排除された枝野氏が一から立ち上げた政党だ。その一方、国民民主は旧民主党を受け継いだ旧民進、旧希望両党の継続政党で、民主党以来の党の資金や中央、地方の組織、地方議員の多くを政党資産として受け継いでいる。

特に、政党交付金の仕組みなどから、資金は立憲民主を大きく上回り、2019年夏の参院選を経た現在でも約50億円の「貯金」があるとみられている。

玉木新党を取り込む「大連立構想」も

枝野氏ら立憲民主は、国民民主を丸ごと吸収することで国民民主の政党資産取り込みを狙ったが、玉木氏の分党方針はそれにくさびを打ち込んだ格好だ。

さらに、政党運営の基軸となる政治路線でも枝野、玉木両氏の主張は対立している。枝野氏は共産党との選挙協力を含めた連携を重視しているが、玉木氏の目指す改革中道路線は、自民党のリベラル勢力との連携も視野に入れたものとされる。「まさに水と油」(玉木氏周辺)で、2019年夏の参院選の前後には、安倍晋三首相が憲法改正で国民民主との連携を打診し、玉木氏も乗り気だったという関係者の証言もある。

コロナ禍への対応で国民的批判にさらされる安倍政権にとって、「国民民主の分裂は助け舟になる」(自民幹部)との声も相次ぐ。自民党内では、自民との連携を深める維新に加え、「新たな玉木新党を取り込んでの大連立で窮地をしのぐ」(閣僚経験者)との構想もささやかれている。コロナが奇跡的に収束して年内解散が可能になった場合、維新と国民の選挙協力で野党が分断されれば、「漁夫の利で自民勝利もありうる」(自民選対)との期待もある。

ただ、そうした「永田町の論理」に対する国民の不満や嫌悪感は少なくない。ここにきてSNS上では「#安倍やめろ」「#選挙に行こう」とのハッシュタグがトレンド上位に目立つ。若さや経歴から「野党の星」ともみられていた玉木氏の新党が自民の補完勢力となれば、「玉木氏の政治リーダーとしての資格が問われる」(自民長老)ことは避けられない。

いったんは政権交代を成し遂げた旧民主党での上司と部下の関係だった枝野氏と玉木氏。「もともと身内だった野党第1党と第2党のリーダーが主導権争いを繰り広げること自体、野党への国民不信の拡大につながる」(有力政治ジャーナリスト)との声は多い。

分党で勝負に出た玉木氏にとって、お盆明けまでの数日間が次世代リーダーとしての政治生命を左右する厳しい試練の時となるのは間違いない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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