安倍首相はなぜ「世論」から逃げまくるのか

政治家に都合よく使われがちな世論の虚実

世論は政治家にとって都合のよいように使われがちだ。写真は2019年7月の参議院選挙における街頭演説風景(撮影:尾形文繁)

6月中旬、首相官邸のホームページに掲載されている「内閣制度の概要」の欄の図が修正された。国民と内閣の関係を示す矢印の向きが反対方向に変えられ、添えられている言葉も「行政」から「世論」となった。

修正前の図については、5月ごろからネット上で「内閣が国民をバカにしているようだ」などという批判が相次いだ。国会でも野党議員が「世論をないがしろにしている表現だ」などと批判し、修正されるに至った。

確かに修正前の図は不自然である。問題の図は国会、内閣、最高裁判所と国民の関係を示したものだが、国民との関係を見ると、内閣との関係だけ矢印が逆になっている。また国会と最高裁判所、内閣の3者の関係は、それぞれ双方向に矢印があって相互の牽制、抑止関係が書かれているが、国民との関係はなぜか一方向だけとなっている。この点は修正されていない。

「行政」を「世論」に変更

国会、内閣、最高裁判所はいずれも権力機関であり、国民に対して権力を行使する。それに対し、国民の側も権力をチェックしたり抑止する手段がある。本来ならその両方を記すべきであろう。内閣との関係では、修正前は内閣が国民に対して行うことを「行政」と記していた。それをほかの2つに合わせてベクトルを変えて「世論」としたのである。

つまり、内閣は世論によってチェックされることを意味しているのであろう。この修正に納得したのか、ネット空間や国会の議論は収まってしまった。新聞やテレビなどのマスコミも、さらりと修正の事実に触れるだけで終わっている。

しかし、この修正のタイミングは首相官邸にとって最悪だった。いかにも「政府は世論に耳を傾けて行政を行います」と言わんばかりの変更だが、現実の政治は日々その正反対のことが行われている。

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