元特殊部隊員が「尖閣諸島」に隠密上陸した事情 異色の書き手が語るドキュメント作品の舞台裏
伊藤:いちばん神経を使うときは、1時間で1メートルしか進まない場合もあります。音がまったくしません。つまり、虫が鳴くのも邪魔しないほどで、相手に気づかれないわけです。
成毛:たしかに魚釣島のような場所ではいかに自然を味方につけるかが重要のはず。それがよくわかる箇所で、この描写にはうなりました。
伊藤:ここはまさに、早朝に登山した際の感覚をそのまま書きました。人間という動物が自分1人という環境を伝えたかったんです。動き自体はなかなかに体力を使います。気づかれずに近づくための、体の使い方の1つです。
尖閣諸島でぶつかり合いが起きたら…
成毛:ところで、そうやって苦労して敵地に侵入しても、海外ドラマを見ていると、特殊部隊員が敵に捕まってしまうことがよくありますよね。拷問まで行かなくても、普通にやられるとつらいことってありますか?
伊藤:痛みなんか比べものにならいのは、起こされることでしょうか。寝かさない。これは厳しいです。3日を越すと、厳しいという単語では表現できないくらいになりますね……。
成毛:この小説が多くの方に読まれているのも、そういう圧倒的なリアリティがあるからでしょうね。冒頭では、中国の特殊部隊チームが中国国旗を掲げ、それを日本国旗に海保が掲げ変えて、またそれを……と、不思議な国旗掲揚合戦になっていきます。途中で、海保に代わって海上自衛隊特別警備隊の隊員3人が魚釣島に隠密上陸していくのが、先ほどの「スネーク・オペレーション」の箇所。実際に尖閣で戦闘があるとしたら、こんなふうに「せめぎ合い? 敵味方のいじめ合い」になる……という可能性に興味をひかれました。
これは、尖閣の地理を考えるとまず納得がいくし、そもそも真正面から正規の海軍力でぶつかり合うのはお互いにとって得策ではないだろうから、大いにありうるシナリオだと読んだわけです。
伊藤:そうですね。海軍力のぶつかり合いをどう避けるか、そのための特殊部隊かもしれません。成毛さんに原稿段階でアドバイスをいただけたことも、貴重でした。投資家としての成毛さんの視点は、アメリカやPMC(民間軍事会社)の思惑を設定する際に大いに参考になったんです。北朝鮮を、資源の宝庫として韓国や米中が鵜の目鷹の目で見ているという現実など、原稿に生かさせていただきました。
成毛:今回はいろんな方のアドバイスを反映させたとか。
伊藤:リアリティーをとにかく出したく、名前は出せない方ばかりですが、お世話になりました。
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