野球界にそびえる、プロとアマの高すぎる壁

「プロ対アマ」「セ対パ」の複雑怪奇な構造

2リーグ制になった後、深刻化したのがセ・パの選手引き抜き合戦だ。そうして両者のいがみ合う構図は深まっていく。巨人、阪神タイガースという人気球団の在籍するセ・リーグが人気を集める一方、1960年代から80年代にかけてパ・リーグは観客動員に苦しんだ。

パ・リーグは打開策として1リーグ制への移行や交流戦の導入を求めたが、セ・リーグの5球団は巨人戦というドル箱を手放したくないため、拒否し続ける。ちなみに2004年に発売された大坪正則の『プロ野球は崩壊する!』によると、年間テレビ放映権収入は当時、巨人が約80億円、セ・リーグの5球団は約20億円なのに対し、パ・リーグは約5億~8億円と推定される。

コミッショナーが漏らした本音

だが、テレビ放映権を中心としたビジネスモデルはもはや壊れた。そして2004年の球界再編問題により、プロ野球の古い体質があらためて浮き彫りになる。新たな体制づくりが必要なのは、誰の目にも明らかだった。

2005年12月、当時のNPBコミッショナーだった根来泰周は記者クラブとの昼食会で、正直な心境を吐露している。複雑な構造にあるプロ野球界をまとめるのが、いかに大変なのかがよく伝わってくるカミングアウトだ。

「いつも言うことですが、昭和24年末にプロ野球の1リーグ制が2リーグ制に分裂し、両連盟の所属球団間の泥仕合が展開されるようになりました。そこでその収拾策として両リーグがプロ野球組織を結成し、野球協約が締結されたというのがそもそもの始まりです。プロ野球の運営は、球団と連盟が行い、野球組織は、『連絡会議』であり、『協約違反の裁定・審判・制裁機関』という位置づけであったのです。かろうじて『日本選手権試合』と『オールスター試合』は、野球組織が管理するということでした。昭和46年に野球協約が全面的に改正されましたが、基本は何も変わっておりません」

プロ野球がいかに“奇怪な組織”であるか、よくわかる。ネット上に極めて興味深いスピーチが公開されているので、ぜひご覧いただきたい。

コミッショナーが音を上げるほど構造改革の進まないプロ野球界で、セ・リーグに比べて早くから危機感を抱いていたパ・リーグは、新たなビジネスモデルを創出した。2007年に6球団それぞれが出資し、役員や社員を出向させてパシフィックリーグマーケティング株式会社を設立したのだ。経費削減やナレッジ、ノウハウの共有など、リーグ全体としてビジネスを行う仕組みを作った。パソコンやスマートフォン、タブレットで試合中継などを流す「パ・リーグTV」では今季、ハイライト動画を無料で提供するという画期的なサービスが始まっている(詳しくは筆者の記事を参照)。

一方、セ・リーグにはそうしたサービスやコンソーシアムはまだ存在しない。6球団の足並みがそろっていないからだ。パ・リーグが一致団結しているだけに、セ・リーグのまとまれない構図は一層鮮明になる。それが、「オールジャパン」になれないプロ野球界という印象を強くしている。

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