コロナ後を考えるベンチャーに欠けている視点 シリコンバレー型だけが通用する訳ではない
ラクダは、多様な気候の下で生存できる。水がなくても何週間も生き延びるが、ある時存分に水を飲み、そしてタイミングを計って疾走する――。
ラクダこそ、スタートアップ企業にとって、目指すべきリアルなマスコットだと、Lazarow氏は主張する。さらにLazarow氏は、ラクダ型スタートアップは、大きな赤字を出してでもユーザー獲得する、そして次のシリーズでもっと多くの投資をもらう、といったこれまでのシリコンバレー型スタートアップと、まるで異なる手法だと続ける。
調達額が少なくても企業は成長できるか
ラクダ型スタートアップになるポイントには、①安定的な成長②現金をしっかり持つ③投資先行ではなく最初からビジネス重視(収益重視)がある。実際にアメリカではすでにラクダ型のスタートアップは沢山ある。とくにシカゴ、ニューヨーク、サンディエゴなどに多い。
Lazarow氏によると1つの好例はシカゴ発のフードデリバリー企業、Grubhub(グラブハブ)である。2004年に設立された同社は小さなレストランとも提携し、創業時から規模拡大より収益/コスト重視の路線を選んだ。
すべての資金調達金額は8400万ドル(89億円)で、競合でシリコンバレー発のDoorDash(ドアダッシュ)の14億ドル(1493億円)の調達金額に比べると規模が小さい。
従来型であるシリコンバレーモデルの宅配サービスであれば、無料キャンペーンを大々的に行い、(一時的に)増やしたユーザー数により、もっと大きな投資を呼び込む手法が使われている。
だが、大きな資金調達ができると、各地への拡大や知名度の向上につながるものの、事業の赤字とVCの短期収益志向に追われ、無料キャンペーンをもっと行い、もっと資金調達しないといけなくなる。そうすると、落ち着いて事業の収益性や投資家抜きの事業軌道修正を検討する余裕がなかなかなく、やがて赤字が長く続く「悪循環」に陥るケースも出てくる。
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