堀紘一氏、クリステンセン教授と経営を語る 経営とは理論的なのか

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クリステンセン:そうなんですよ。似たような感じで、2つのグループを作って仕事を進めてきました。片方は、かつてのBCGのようなコンサルティング会社で「イノサイト」という名前です。企業が新しい成長事業を生み出せるように助けるための会社です。

Clayton M. Christensen
ハーバード・ビジネス・スクール教授
1975年ブリガムヤング大学経済学部を首席で卒業後、77年英国オックスフォード大学で経済学修士、79年ハーバード大学ビジネススクールで経営学修士取得。卒業後、米国ボストン・コンサルティング・グループにて、主に製品製造戦略に関するコンサルティングを行ないながら、ホワイトハウスフェローとして、エリザベス・ドール運輸長官を補佐。84年MITの教授らとともに、セラミック・プロセス・システムズ・コーポレーションを起業し、社長、会長を歴任。92年同社を退社し、ハーバード大学ビジネススクールの博士課程に入学し、2年で卒業(経営学博士号取得)。コンサルティングファーム、イノサイトを創業。著書に『イノベーションのジレンマ』『イノベーションへの解』などがある。

もう片方の「クリステンセン研究所」では、公共政策の「破壊的変化」問題に取り組んでいます。どちらもDIほど大きくなくて職員数は合わせて120人くらい。コンサルティング会社は営利目的、研究所は非営利です。

研究所には私が教えた卒業生たちがいて、コンサルティング会社のほうで幹部になったりしています。研究所はパロアルトとボストン、コンサルティング会社はボストンとシンガポールにあります。

:いいですねえ。

クリステンセン:話の続きをどうぞ。

:今では、創業当時に行っていたベンチャー投資についても発想を転換しました。投資先をたくさん抱え込むようなベンチャーキャピタルにはならないことにしたのです。

これはいいと思える事業計画に限定して、おカネと人材をつぎ込む。なぜならアメリカのベンチャーキャピタルとは違うからです。私たちはアメリカのようにはやれません。

クリステンセン:そうですか。

堀鉱一(ほり・こういち)
ドリームインキュベータ代表取締役会長1945年、兵庫県生まれ。東京大学法学部卒業後、読売新聞経済部を経て、1973年から三菱商事に勤務。ハーバード・ビジネススクールでMBA with High Distinction(Baker Scholar)を取得後、ボストン・コンサルティング・グループで国内外の一流企業の経営戦略策定を支援する。1989年より同社代表取締役社長。2000年6月、ベンチャー企業の支援・コンサルティングを行なうドリームインキュベータを設立、代表取締役社長に就任。『コンサルティングとは何か』など著書多数

:出資先の一つであるアイペット損害保険は、今や日本のペット医療向け保険業界第2位で、大きく業績を伸ばしています。リバリューというリバースサプライチェーンの会社も急成長しています。

それから「東京ガールズコレクション」。若い女性向けのファッションイベントなんですよ。パリコレクションやミラノコレクションとは違いますが。その商標権に投資しました。

クリステンセン:それは面白いですね。

:そこでですが、こういう話を聞いた人は、直観的にどんな感想を抱くでしょうか。

よそのコンサルティング会社も、昔ながらの業務から多様化しているようです。コンサルティング業界は、色々な面で分散傾向にあるように思います。この状況をどうみますか。たとえばDIはあれこれ少しずつやっていて、焦点が定まっていないというふうに見えるでしょうか。

クリステンセン:お話を伺いながら、私の考え方と重ね合わせたり、直観的思考で一致するかしないか、という点を考えたりしていました。

経営について、今度は私の視点から話してみましょう。お互いに考え方はとても似ている、ということを説明したいと思います。焦点が定まらないように見える戦略も、実は焦点が定まっているのです。人材投資などについてもです。

:どうぞ。

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