堀紘一氏、クリステンセン教授と経営を語る 経営とは理論的なのか
クリステンセン:そうなんですよ。似たような感じで、2つのグループを作って仕事を進めてきました。片方は、かつてのBCGのようなコンサルティング会社で「イノサイト」という名前です。企業が新しい成長事業を生み出せるように助けるための会社です。
もう片方の「クリステンセン研究所」では、公共政策の「破壊的変化」問題に取り組んでいます。どちらもDIほど大きくなくて職員数は合わせて120人くらい。コンサルティング会社は営利目的、研究所は非営利です。
研究所には私が教えた卒業生たちがいて、コンサルティング会社のほうで幹部になったりしています。研究所はパロアルトとボストン、コンサルティング会社はボストンとシンガポールにあります。
堀:いいですねえ。
クリステンセン:話の続きをどうぞ。
堀:今では、創業当時に行っていたベンチャー投資についても発想を転換しました。投資先をたくさん抱え込むようなベンチャーキャピタルにはならないことにしたのです。
これはいいと思える事業計画に限定して、おカネと人材をつぎ込む。なぜならアメリカのベンチャーキャピタルとは違うからです。私たちはアメリカのようにはやれません。
クリステンセン:そうですか。
堀:出資先の一つであるアイペット損害保険は、今や日本のペット医療向け保険業界第2位で、大きく業績を伸ばしています。リバリューというリバースサプライチェーンの会社も急成長しています。
それから「東京ガールズコレクション」。若い女性向けのファッションイベントなんですよ。パリコレクションやミラノコレクションとは違いますが。その商標権に投資しました。
クリステンセン:それは面白いですね。
堀:そこでですが、こういう話を聞いた人は、直観的にどんな感想を抱くでしょうか。
よそのコンサルティング会社も、昔ながらの業務から多様化しているようです。コンサルティング業界は、色々な面で分散傾向にあるように思います。この状況をどうみますか。たとえばDIはあれこれ少しずつやっていて、焦点が定まっていないというふうに見えるでしょうか。
クリステンセン:お話を伺いながら、私の考え方と重ね合わせたり、直観的思考で一致するかしないか、という点を考えたりしていました。
経営について、今度は私の視点から話してみましょう。お互いに考え方はとても似ている、ということを説明したいと思います。焦点が定まらないように見える戦略も、実は焦点が定まっているのです。人材投資などについてもです。
堀:どうぞ。