また、トヨタ幹部は「中国でコツコツやってきた成果が出ている。故障しないいい車と評価されており、リセールバリューが高いことが消費者に浸透してきた」と自信を示す。2019年は中国市場全体が8%減となる中、162万台(前年比9%増)を売り、日本の販売台数(161万台)を初めて上回った。トヨタの世界販売台数の約17%を占め、アメリカに次ぐ2位だ。
トヨタは中国で快走を続ける見通しだが、イギリスの調査会社のLMCオートモーティブは中国の2020年の新車販売台数は前年比10.7%減の2276万台と予想する。
世界全体では前年比20%前後の落ち込みが予想される中、中国の傷が浅いのは、新型コロナの第一波の収束時期が早かっただけではない。中央政府による電気自動車など新エネルギー車に対する補助金政策の延長に加え、一部の地方政府によるナンバープレートの発給規制緩和など消費喚起策が取られているからだ。
入れ替わる日系メーカーの順位
こうした消費喚起策が追い風となり、トヨタとホンダの7月の販売台数は過去最高を記録。ホンダの倉石誠司副社長は「新型車の投入をテコに暦年では前年同等、年度では前年度を超える販売を目指したい」と話す。
一方、日産は2020年の中国販売は前年比4.6%減を見込む。中国市場全体から見れば健闘していると言えるが、新型車が少ないことや廉価帯の中国専用ブランド「ヴェヌーシア」の販売低迷が響いている。日産は近年、中国市場で伸び悩んでおり、2018年まで中国の日系メーカー首位だったが、2019年にはトヨタとホンダに抜かれて、3位にまで転落した。
トヨタの躍進について中国の自動車産業に詳しいみずほ銀行法人推進部の湯進(タンジン)・主任研究員は複数の要因を挙げる。
1つは前述した新型車の積極投入だ。2つ目が中国でのハイブリッド車(HV)人気の高まりだ。湯氏は、「トヨタは中国のHV市場で75%のシェアを持つ。伸び盛りのHV市場で品ぞろえが一番豊富なだけに、他社に比べて競争力が高い」と話す。 中国のHV市場は2019年で約35万台とまだ小さいが、中国政府は2021年からHVを「低燃費車」と位置付けて優遇する政策を導入する予定で、HVに強みのあるトヨタには追い風となる。
3つ目が競合他社からの顧客獲得。米中摩擦の影響でアメリカのGMやフォードは台数を減らしているほか、フランスのグループPSAは販売不振から中国の長安汽車との合弁解消を決めるなど、「他ブランドを購入しようとしていた人たちの受け皿になっている」(湯氏)と分析する。
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