湯氏によれば中国の現在の乗用車販売は半分が車を初めて買う人による「ファーストカー」需要、残りの半分が車をすでに保有している人の買い替えによるものだという。
コロナ禍でファーストカーを買おうとしていた人の収入が減り、そこをメイン顧客にする地場系の乗用車販売は大苦戦。2020年1~6月の販売は前年を3割近く割り込んでいる。一方、トヨタなどの日本車は中間層以上が主に買い替えを目的に購入するため、ブランド力が物を言う。トヨタは廉価帯をほとんど手がけておらず、高級車のレクサスの販売が好調だ。さらにHVという優位性も手伝い、逆風下でも販売拡大を実現できているといえる。
トヨタは今回、2021年3月期の連結販売台数目標を20万台上積みして720万台(前期比約20%減)とした。連結販売台数には好調な中国の販売台数が含まれないが、欧州や米国、日本など中国以外の地域でも当初の想定を上回るペースで回復しているからだ。
【2020年8月11日13時00分追記】初出時の販売台数の表記を一部修正いたします。
一方で通期の営業利益予想5000億円(前期比79%減)は据え置いた。夏以降、台数が順調に回復すれば業績が上振れる可能性は高い。
着実に進んだ損益分岐台数の低下
もっとも、4~6月期決算で最終黒字を確保できたことについて、トヨタ幹部は「損益分岐台数(収支が均衡する販売台数)を下げてきた結果が出た」と強調する。リーマンショック後の2009年3月期にトヨタの連結販売台数は756万台(前期比15%減)となり、営業利益は4610億円の大赤字に転落した(2008年3月期は2兆2703億円)。
収益構造が当時と一緒ならば、2021年3月期も巨額の営業赤字に転落しかねないが、10年以上かけて取り組んできた体質強化で営業利益で5000億円の黒字確保を見込む。
部品メーカーと一体となった原価低減の効果は毎年2000~3000億円規模に及び、「リーマンショック時に比べ200万台以上、損益分岐台数を下げることができた」(豊田章男社長)。ただ、「まだまだ無駄な工程は減らせる」(トヨタ幹部)と生産効率化の手は緩めない考えだ。
トヨタグループの2019年の世界シェアは11.7%でフォルクスワーゲングループに次ぐ2位。世界2位のアメリカ市場で14%のシェアを持つ一方、最大の中国市場では6.3%と見劣りする。 コロナ禍でも自動運転や電動化など次世代技術の開発競争は止まることはない。成長投資を継続するためにも「稼ぐ力」は不可欠だ。コロナ禍を跳ね返し、中国市場で一段とシェアを高められるのか。176万台(前年比8.6%増)という今年の販売目標達成は、トヨタにとって重要な意味を持つ。
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