コロナ後は「増税時代」が到来するかもしれない 「100兆円規模」の財政赤字をどうするのか?

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こうしたトービン税のような仕組みは、従来から現実性が薄いとされてきた。そもそも金融業界や投資家にとってみれば税を徴収されることはマイナスでしかない。加えてあらゆる金融取引に網をかけるとなると、世界各国が国際協調のもとに同意しなければ租税回避などの問題が起きてしまうからだ。

「格差是正」に向け国際協調が得られるか

だが、野村部長は「今回の新型コロナ危機のような状況下では、国際協調による合意が、従来よりも得られやすくなっている」と指摘する。今回の「コロナショック」ではアメリカのFRB(連邦準備制度理事会)などの対応に見られるように、中央銀行が格付けの極めて低い社債を引き受けるなどして資金供給を拡大、強制的に信用リスクの払拭に奔走している。これは投資家に取ってみれば、リスクをとって利益を得やすい状態になっているとも言える。

一方で、低賃金労働者や医療従事者などエッセンシャルワーカーと呼ばれる人々などはコロナ禍で失業や命の危険にさらされている。こうした格差を是正するというはっきりした目的があるため、従来よりも国際協調による課税が打ち出しやすいというわけだ。

北野氏も「今までは全世界が法人税の引き下げ合戦に明け暮れていたが、コロナショックをきっかけに、今後は法人税を引き上げやすくなるかもしれない」と環境変化の可能性を指摘する。

新型コロナとは関係なく、世界的な所得・資産格差の拡大などへの対応策の一つとして、新たな財源を確保しようとの動きは以前からもある。たとえば「GAFA」のような、世界中で巨額の利益をあげる「プラットフォーム型企業」への課税強化の動きだ。

その意味で、こうした「新型の金融取引税」の導入は現実味のある話だ。しかも、財政再建問題は各国の政権運営とも密接にからむだけに、今後のマーケットにも影響を与えそうだ。2人の対談は安倍政権の税制をめぐるスタンスや、アメリカ大統領選後を見据えた潮流にも触れられており、ぜひ動画で確認して欲しい。

東洋経済 会社四季報センター
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