奨学寄付金が得られない研究室はどうするのか。
製薬会社依存が強まる懸念
北海道大学病院の豊嶋崇徳教授によると、とくにがん治療では、保険医療の範疇のみで治療の水準を維持するのは難しいという。それを寄付金で補填してきたが、寄付金額が少なくなってきたために、一部はカンパなどで集めたお金をあてたりしている現状がある。保険医療できちんとカバーされなければ、ますます製薬会社の資金に依存するようになるのではないか。
豊嶋教授は警告する。
「さらに、臨床研究法の施行後、製薬会社が定めている薬の処方量を減らそうとする研究や、薬に関係のない手術法の研究などにはますますお金がかるようになった。自由な研究ができなくなってしまっている。国の公的な資金を投入しないと、製薬会社による医療現場の支配が強まるばかりだ」
【2020年8月6日16時45分追記】初出時、豊嶋教授への取材内容の記述に不正確な部分があったため、小見出しや本文を上記のように修正しました。
国が医療費や研究費を抑制する中、製薬会社に医療現場で必須な資金を握られている状況だ。
このままでは大学病院が製薬会社の支配下に置かれるのではないか――。そう危機感を抱く医師らは少なくない。
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つじ・まりこ / Mariko Tsuji
1996年生まれ。早稲田大学卒。非営利の報道機関「Tansa」で活動。現在はネット上で性的な画像が取引される被害についてシリーズ「誰が私を拡散したのか」を執筆している。
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わたなべ まこと / Makoto Watanabe
1974年神奈川県生まれ。2000年から朝日新聞記者。東京本社特別報道部などで調査報道を手掛け、高野山真言宗の資金運用の実態などを報じたほか、原発事故後の長期連載「プロメテウスの罠」で高レベル核廃棄物がテーマの「地底をねらえ」、大熊町のルポ「原発城下町」を執筆。朝日新聞社を2016年3月に退社後、探査報道に特化した「ワセダクロニクル」を創刊。ワセクロは、電通や共同通信の癒着を暴いた「買われた記事」や北朝鮮による元動燃の核科学者拉致疑惑「消えた核科学者」など13シリーズを発信。日本外国特派員協会の「報道の自由推進賞」やジャーナリズム市民支援基金の「第1回ジャーナリズムXアワード」の大賞など5つの賞を受賞した。