コロナで加速したエレベーター界の働き方改革 通勤時間を減らし、1台でも数多く点検する

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――コロナの影響で経営戦略に変化はありますか?

5月1日付けで戦略営業担当という部署を編成し、大口顧客向けの営業を強化している。大口顧客から他の顧客を紹介されることも多く、効果が出ている。

新たな働き方も検討し始めた。当社にはメンテナンスに回っている技術者が約500人いるが、これまでは片道平均1時間10分かけて会社に出勤し、会社で着替えてから現場に行き、最後は会社に戻ってきていた。

いしだ・かつし/1966年生まれ。1985年エス・イー・シーエレベーター入社。1991年育英管財入社。1992年ペムス入社。1994年ジャパンエレベーターサービス(現ジャパンエレベーターサービスホールディングス)設立。2020年6月より現職(写真:ジャパンエレベーターサービスホールディングス)

その(通勤)時間をなくそうと、社員に車を貸し出して自宅から現場に直行し、終われば直帰。週に1回出社して報告などを行うことを始めている。そうすれば、1日2時間くらい空いた時間ができるので、その時間で点検を1台多くやるとか、残業代を減らすことによって利益率を飛躍的に上げることができる。

欧米ではこのようなやり方が一般的で、会社に通勤して技術者が着替えて点検しに行くというのは日本のやり方だ。本来は段階を踏んでグローバルに合わせたやり方に変えていくつもりだったが、コロナによって一気に進んだ。

緊急事態宣言中はテストケースとして数十人規模で始めたが、下期以降は数百人規模で定常的に行えるようにする。現場の意見は好評で、前の体制にはもう戻れない。メンテナンスの技術者と営業担当が会話をし、修繕工事の打ち合わせをする機会が少なくなるので、故障率などの管理はしっかりやらないといけない。それをリモートでどのようにやっていくかを検討しているところだ。

メーカー系料金が高いわけ

――メーカー系のエレベーター会社と違い、なぜ安い価格でメンテナンスができるのでしょうか。コロナで顧客から価格低下の要求が強まれば、メーカー系との価格競争が激しくなりませんか。

メーカーがエレベーターを新設する場合、設置費用自体はそれほどかからないが、開発費用がかかっている。メーカーは研究所に何十人、何百人の開発者がいて、何年かに1度、新しい機種を出す。新設する際に高く売らず、その分開発費用がメンテナンス(費用)に跳ね返ってくる。これがメーカー系のメンテナンス料金が当社よりも高くなる原因だ。

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

メーカー系の契約の一部が独立系にとられたとしても、新設エレベーターがそれを超えるペースで増加していればメーカー系の保守契約も増加していることになる。メーカー系としては安い契約まで取りに行くのか、保守契約台数が増えているので価格を下げてまで取りに行かなくて良いと考えるのかということになるが、僕が経営者だったら利益率の高いところを取っていく。価格を下げれば、既に高い価格で契約している物件も下げなければいけなくなるというジレンマもある。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では、海外でどのように事業を展開していくのか、具体的に語っている。
田中 理瑛 東洋経済 記者

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たなか りえ / Rie Tanaka

北海道生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。報道部、『会社四季報』編集部を経て、現在は会社四季報オンライン編集部。食品業界を担当。以前の担当は工作機械・産業用ロボット、ドローン、医療機器など。趣味は東洋武術。

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