KDDIがケーブルテレビ最大手JCOMに出資、アクセス回線網活用し固定通信強化狙う
KDDIは、ケーブルテレビ局統括運営最大手のジュピターテレコム(JCOM)<4817>の株式37.8%を取得すると発表した。出資額は3617億円。4月1日よりJCOMはKDDIの持分法適用会社となる。KDDIはこの買収により、JCOMの持つアクセス回線(通信事業者のネットワークとユーザー宅を結ぶ、ネットワークの末端部分)網を活用し、固定通信事業の強化を進める。
KDDIは、2月中旬をメドに、JCOMの現在の最大株主である米国のメディアグループ、リバティ・グローバル・インク(LGIグループ)が保有する中間持ち株会社3社の持分すべてを買い取る。(住友商事の持分27.7%は維持。)これにより、KDDIはジュピターテレコム株37.8%を保有する大株主となる。1株当たりの買い取り額は約13万9517円で、25日のJCOM株の始値と比べると、64.5%のプレミアムを付けたことになる。
小野寺正社長は「ネットワークがIPになり、固定通信におけるアクセス部分(通信事業者のネットワークとユーザー宅を結ぶ、ネットワークの末端部分)が中継部分に比べどんどん重要になっている。KDDIでは(2006年に)東京電力傘下のパワードコムを子会社化するなど、アクセス回線の強化を進めてきた」と説明。今回のジュピターテレコムの株式取得も、固定通信事業強化を目的としたものと位置づけた。
固定通信のアクセス部分については、NTTが公社時代に日本全国に敷設してきたインフラがあり、KDDIなど競合他社はNTTに使用料を払ってそのインフラを利用してきたという経緯がある。だが、「黒電話の時代と違い、IP化された現在のネットワークのなかでは、アクセス部分が付加価値の7割強を占める」(小野寺正社長)。
固定通信は熾烈な価格競争で収益性が低下し、KDDIが今期400億円の部門営業赤字を見込むほか、NTTでも西日本は営業赤字が続いている。現状ではどこも儲からない業界構造となっているが、自社でアクセス回線を持って業務の効率化も進めれば、将来的には十分利益を出せる余地があるとKDDI側は考えているようだ。