日本人が知らない「欧州夜行列車」のコロナ対策 6人個室を1人利用、新路線延期や運行断念も

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運行を再開したナイトジェットは、基本的に通常どおりの予約が可能であるが、イタリア方面の列車だけは、同国政府からの指示により個室を買い取る形での販売のみが行われている(2020年7月現在)。

外出規制解除後、ナイトジェットの利用は好調だが、満席とならないように予約が制限されているため、収益には影響が出ている(筆者撮影)

つまり、3人部屋でも6人部屋でも、1人で利用する場合は、その個室ごと予約しなければならないということになる。

もちろん、乗車前に健康状態が優れない場合の利用は控えるように呼びかけており、また乗車前には手洗いもしくは消毒を推奨している。車内では、自室内に1人でいる場合や就寝中を除き、マスク着用が義務づけられている。乗車する際も、他人との間隔を一定以上開けるよう促すなど、徹底的な対策が取られている。

スウェーデン行きは運行中止

フランスは、6月末には国内の列車が通常どおりの運行スケジュールへと戻り、夜行列車も復活した。こちらは再開後、とくに予約に対する制限などは設けられていない。

パリにおける夜行列車の改札風景。ここでは乗客同士の距離を十分保つよう呼びかけている。またマスクを着用しない人には罰金が科されることもある(筆者撮影)

だが、車内ではマスクの着用が義務づけられており、違反が発覚した場合は135ユーロ(約1万6700円)の罰金が科せられる。就寝中のマスク着用は少々息苦しく感じるかもしれないが、罰金の対象となるとやむをえない。

なお、主要駅構内には、マスクや消毒液を販売する自動販売機が設置されており、仮に持ってくるのを忘れたとしても駅で購入できる。また、乗車時はホーム入り口付近で入場制限を行い、十分な間隔を保ちながら乗車するよう対処している。

一方、運行を断念した列車もある。毎年、夏季期間だけ運行されるベルリンとスウェーデン国内を結ぶ夜行列車「ベルリンナイトエクスプレス」は、スウェーデンが高感染危険国に指定されていることから、2020年の運行を取りやめた。

この列車は、ベルリンから北海に面した港町ザスニッツまで走った後、車両をフェリーに積み込んでスウェーデンのトレレボリまで渡り、そこからマルメまでまた陸路を走るという珍しい運行形態が特徴だった。だが、2021年からはハンブルク―ユトランド半島―コペンハーゲンという陸路伝いのルートへ変更される予定となっており、フェリー航送は昨年が最後となってしまった。

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