日野自動車、海外の2市場を一段と攻める理由 下義生社長「2025年度の中計の目標は変えない」

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運送会社にとって、トラックは大事な商売道具。いくら車両価格が安くても、不具合や故障が多発したら商売に支障が出るし、長く使うものなので逆に高くつく。だからお客さんは品質や性能、価格、サポート体制などをすべて比較したうえで、日本のトラックメーカーを高く評価してくれている。

もちろん、大事な地盤を守って、さらに台数を伸ばしていくには、競争力をより高めることが必要だ。そのために開発・調達の現地化を進める。乗用車と違って、トラックは仕様が多岐にわたる。今までは東南アジア向けの車種も日本の設計部隊が動かないとできなかったが、基本ユニットや先進技術以外の部分はできるだけ設計・開発機能を現地に移したい

現地のお客さんの声を聞いて、現地で設計を考え、現地で部品も調達する。そのために今、タイに新たな車両開発・生産拠点を建設中だ。この拠点を戦略的に活用することで、東南アジアのニーズに適したトラックを迅速に開発し、同時にコストをもっと下げていく。

北米は大型カテゴリーを攻める

──もう1つの重点市場、北米での成長戦略は?

北米は最大手のフレイトライナーやパッカー(ブランド名はケンワース、ピータービルト)など、欧米系の強力なライバルが数多くいて、当社のシェアはまだ限られる。

ただ、最近行われた第三者によるディーラーへのアンケートでは、日野に対する評価・期待が一番高かった。アメリカのディーラーは複数メーカーのトラックを扱うが、日野のトラックは燃費などの性能が高く、かつ、納車後の故障・不具合がもっとも少ないと。

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

これまで当社の北米の製品ラインナップは、大きいものでも現地の分類でいうと「中型」だった。そこである程度の存在感を出せてきたので、いよいよクラス8(分類上の最大クラスで車両総重量が15トン以上)と呼ばれる大型のカテゴリーに進出し、該当車種の納入を2019年に開始した。

現地では一般的なボンネット型(運転席前のボンネットにエンジンを収納する構造)の大型トラックだが、ほかのメーカーに比べて運転席からの視界が広い。使いやすいし、乗り心地もいいとユーザーの反応は上々だ。このクラス8の販売に注力し、北米における存在感を着実に高めていきたい。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では、「電気自動車や燃料電池トラックの開発に対するスタンス」についても詳しく語っている。
渡辺 清治 東洋経済 記者
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