日本はコロナ大量感染の米国よりも深刻になる 今後の「経済の下振れリスク」はかなり大きい
アメリカの株式市場は3月に反転、6月以降も高値圏で推移している。この大きな理由の一つは、財政金融政策が大規模に打ち出されたことだ。連邦政府の財政赤字は、コロナ後に政策対応が打ち出された4月から大きく増えて、GDP比5%程度から6月までに同約14%と、わずか3カ月で一挙にGDPの10%規模に財政赤字が拡大した。
経済メディアなどでは、財政赤字が増えたことをネガティブに報じることが多い。ただ、経済ショックによる損失を抑え経済状況を安定化させるために、適切かつ大規模な財政金融政策を行うことはベーシックな経済理論によって正当化される。
トランプ政権の対応は「大規模かつ迅速」
財政政策には、政府による歳出拡大、そして給付金・減税で家計・企業に対して政府資金を移転する、と2つの手段に分けられる。そして、アメリカでは給付金支給などを通じて、6月までに約1兆ドル(約107兆円、GDP比約4.6%)の政府資金供与がなされ、家計所得を増やしたと試算される。
感染阻止のための都市封鎖によって、アメリカのGDPは4~6月期に前期比で約10%縮小したと推計される。これは戦後最大の経済ショックである。このため、国内総生産(GDP)の10%規模の財政赤字拡大は正当化できると筆者は考えている。
もちろん緊急対応なのでさまざまな問題を抱えているが、十分かつ大規模な政策対応によって経済が正常化するとの期待が、同国の金融市場では保たれている。このため、代表的な指標であるS&P500の年初来騰落率は7月22日現在でプラス圏に浮上するなど、アメリカ株のパフォーマンスが他の多くの国を上回っているのだろう。
同国の現政権の政策対応を評価するために、戦後最大の経済危機と言われたリーマンショック後の財政赤字の推移と比較する。当時、危機発生前の財政赤字はGDP比約1.5%程度だった。
だが、その後1年半程度現在よりは緩やかに財政赤字が増え、2010年1月時点で財政赤字は同10%まで拡大した。当時とは経済危機の性質が異なるので単純な比較は難しいが、リーマンショック後に就任したバラク・オバマ前大統領時による財政政策と比べて、今回のドナルド・トランプ大統領の対応は大規模かつ素早い対応である。
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