ただ、肌で感じられる余韻などの体感はどうしても薄まる。だから、話しやすさに配慮して、ファシリテーターを含めて最大6人程度になるよう、ブレイクアウトルーム(小さなグループに分ける機能)を使用した。
タレントの志村けんさんが新型コロナウイルス感染症に伴う肺炎で亡くなり、感染防止のために家族を看取れない恐怖や、身近な人の死を追体験することも少なくない。蒔田さんはほかの団体から「デスカフェを開催したいので一緒に開催してほしい」と声をかけられ、需要を感じているという。
全世界に広がりを見せるデスカフェ
デスカフェは、1999年にスイスの社会学者ベルナルド・クレッタズ氏が妻の死をきっかけに始めた「café mortel(カフェモーテル)」が起源。その後、2011年にイギリスの社会起業家ジョン・アンダーウッド氏が取り組みを整理し、さまざまな人が開催しやすいように「デスカフェドットコム」というコミュニティサイトを設立した。
これを機に取り組みは世界中に広まり、現在は70カ国で1万件以上のデスカフェが開催されている。
日本では、世界的な潮流とは別の形で、2010年ごろにデスカフェと同じような集まりが誕生。その後、2014年ごろからアンダーウッド氏のデスカフェガイドラインを参考に、国内各地で開催が広がった。
現在、死とはどういうものか語る「哲学系」、死別などで大切な人を失った心に寄り添う「グリーフケア系」、弔辞作りなどワークショップを通して死を考える「ワーク系」など、さまざまなデスカフェに発展を遂げ、全国20カ所以上で開催されている。
デスカフェについて研究を続ける京都女子大学家政学部助教の吉川直人さんは、デスカフェのカジュアルで参加しやすい点にニーズがあると分析する。
「関係性の深い相手とは話しにくい、死というテーマ。さらにはコロナ禍をきっかけに、死について否応なく考えなければならない状態になった。その結果、オンライン形態も含めてのデスカフェの必要性が増すと考えられる」
9月には全国のデスカフェ主催者が集う初のサミット「DeathCafeWeek2020」がオンラインで開催される予定だ。
死は誰もが経験するものの、経験者から話を聞くことができない唯一の出来事。高齢化が進む日本では今後、亡くなる人が多くなる一方で、人口が少なくなっていく「多死社会」を迎える。看取りや葬儀の変化、残された者のケア、心構えなどで課題が増えていく中、デスカフェの重要性は増していくだろう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら