オリンパス撤退、深刻化するカメラ市場の苦境 市場は縮小、次の焦点は赤字転落のニコンに

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ソニーに対抗して、キヤノンも7月9日にフルサイズのミラーレスカメラ「EOS R5」を発表。フルサイズカメラとして初めて8Kでの動画撮影に対応した。スペック上ではソニーのα9を上回る性能を出しており、プロやハイアマチュアカメラマンから賞賛する声が相次いでいる。

キヤノンのカメラ事業部門を率いる戸倉剛イメージコミュニケーション事業本部長は「(ソニーが圧勝している)今の状況を打破する役割がEOS R5にある」と対抗意識を燃やす。

カメラ三強体制は維持できない

ソニー、キヤノンという上位2社に対し、ニコンは6月にようやく一眼レフの最上位新機種「D6」を出したが、ミラーレスカメラでは出遅れが目立つ。損益面でも、2020年3月期と2021年3月期に合計100億円を投じて商品点数の絞り込みや生産拠点の再編、人員削減を進めている。

事業運営費は2022年3月期までに2019年3月期比で500億円削減する方針だが、ミラーレスでどれだけ魅力ある差別化商品を今後投入できるかが復活のカギを握る。

もっとも、デジカメ市場は2020年後半も冷え込みが続く見通しだ。ある業界関係者は「伸びが期待されていたミラーレスカメラの需要すら回復しないことに加え、カメラは(スマホカメラの高機能化で)プロ向けのみ(の商品)になっていく」と指摘する。

コロナで加速したデジカメ市場の縮小がこのまま進めば、現状のソニー、キヤノン、ニコンという3強体制は維持できない。現状の構造改革だけでニコンが事業を継続できるのか。オリンパスのカメラ事業撤退を機に、カメラ各社の帰趨が注目されている。

大竹 麗子 東洋経済 記者

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おおたけ・れいこ

1995年東京都生まれ。大学院では大学自治を中心に思想史、教育史を専攻。趣味は、スポーツ応援と高校野球、近代文学など。

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