巨大企業に富が集まる繁栄が健全と言えない訳

現代社会は縮退を止めない方向へ向かっている

それに対して寡占化が進行した状態では、図bのように最も強大な2つぐらいの種の間の関係だけをセットすれば、それだけで一応は大きなバランスが作れてしまう。経済の場合なら、巨大企業と巨大機関投資家の間で金が回っておりさえすれば、ほかの部分がどんな数値であれ、それだけで一応経済の大枠が決まってしまうので、経済社会はその状態で安定してしまう。

(出所)『現代経済学の直観的方法』(講談社)

そしてここで「偶然そういう状態が達成されることが、どの程度難しくて希少なのか」を眺めると、図aのほうが難しいことはすぐわかる。つまりaの場合、たくさんの相互作用を互いに矛盾しない適正値にセットしなければならず、その絶妙な組み合わせパターンは1通りか2通りぐらいしか存在しない。

ところがbの場合だと、メインの2つ以外はランダムでよいのだから、それらの潜在的なケースも全部数え上げれば、許される組み合わせの数は何千通りもつくれるということになる。つまりaの状態は希少性が高いが、bの状態は希少性が低いことになる。

ともあれこのような形で問題を表現すれば、これがaの希少性の高い状態からbの低い状態へ移行する、一種の劣化であることがきちんと立証できるのである。

この場合、問題の本質は「劣化した状態では注意深くセットすべき相互作用の個数が減っている」ということで、その際には、もし多数の細い流れの矢印が1本の太い流れの矢印に統合されて消失しても、合計流量が同じなら物事は劣化した状態で一応の安定状態を作ってしまうのである。

一度「劣化」するとなかなか元には戻らない

そして「システムが劣化した状態でも生き続けて元へ戻らない」という件に関しては、その極端な実例がわれわれの身近でも見られている。それは人間の延命医療の末期状態で、体に何本ものチューブをつけて外から延命を図る、いわゆる「スパゲッティ症候群」である。

われわれの人体は、本来の健康な状態では先ほどの図のaのパターンのように、各臓器間の相互作用が絶妙な値にセットされ、各臓器が互いに絶妙なバランスで依存し合う形で体全体の機能を維持している。ところがスパゲッティ症候群では、主要な各臓器に外からチューブをつけて1個ずつ別個に維持するため、各臓器間の微妙な相互作用などは最初から無視されており、それがどんなでたらめな値になっていても、一応この状態を強引に維持することができる。

そのように主要な臓器が全部生きているので一応の延命はできるが、単に各臓器がばらばらに自分の機能を維持しているにすぎず、人間としてのまともな活動は一切不可能となる一方、死ぬこともないので、チューブを外さない限りこのままの状態がずっと続いてしまうのである。

つまりセットすべき相互作用の個数が極端に少ないという点からすれば、これも縮退の一形態であり、そしてこれは、こういう劣化状態から抜けることが難しいことの大きな実例である。

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