「引きこもる僕」が「何も言わぬ母」に思うこと

小学生から30代の現在までを振り返って

不登校になっても母は「学校に行きなさい」とは言わなかった。今になってやっとその理由がわかった(写真:keyphoto/PIXTA)  
長崎県在住の中村秀治さんのコラム「ひきこもって見えてきた道」を始めます。中村さんが不登校していた当時のことや、現在の日常を執筆してもらいます。

学校へ行くことが苦痛になったのは小学5年生のころだった。父親は厳しい性格で登校をしぶる僕を叱りつけランドセルごと外に投げ出した。

当記事は不登校新聞の提供記事です

だがその後、両親が離婚して母に引き取られると叱る人物がいなくなり、ひとまず学校は休むことができた。

不登校の原因はわからない。「学校が楽しくないのか」「同級生となじめないのか」「先生がイヤか」「勉強が苦手か」、そう聞かれたら、すべてが当てはまりそうで、ちがうような気もする。

ひさしぶりに登校するとケガをしているわけでもないのに長期的に休む僕の姿を同級生は奇異な目で見た。「サボり魔」とからかわれたりもしたが、いじめだと感じることはなかった。

母は学校へ行かない僕に「行きなさい」とは言わなかった。日常会話はするが学校に関することはとくに何も言われなかった。それが僕にとって救いだった。

扉の閉まる音が

毎朝、母が働きに出かける際に玄関の扉が「……バタン」と閉まる音を聞くたびに僕は心のなかで「今日も学校に行けなくてゴメンナサイ」と母に謝った。

そのことは、のちのちになるまで母親本人には伝えなかった。言えばつらい思いをするのは母だとわかっていたからだ。

中学生になっても不登校は続いた。同級生は学校へ行き勉学やスポーツにいそしみ、社会性も身につけ、人によっては将来の道を見据えてすごしている。

一方、僕は不安な気持ちから逃げるように家のなかで漫画を読んだりゲームをしたりした。しかし楽になることはなかった。学校や将来のことへの不安はいつでも頭をよぎっていた。

次ページ罪悪感と焦燥感で押し潰されそうな毎日だった
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