「プロスポーツの試合」続ける米国のヤバい現状 増えるコロナ陽性者、一部選手は出場辞退

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3月には1人の選手に陽性反応が出ただけでNBAは中止となった。が、次はどのような状況になったら中止となるのだろうか。出場辞退を決意する選手もポツポツと出始めているが、今後は出場辞退が雪崩を打つ展開となるのだろうか。

事態は複雑さの度合いを増している。7月末にはMLBの各チームが国内を飛び回ることになっているが、すでに出場を見送る選手が出始めている。ワシントン・ナショナルズのライアン・ジマーマン選手は6月下旬、今季のプレー見送りを表明した。チームメイトのジョー・ロス選手、元チームメイトで現在はコロラド・ロッキーズに所属するイアン・デスモンド選手、アリゾナ・ダイヤモンドバックスのマイク・リーク選手も今季はプレーしないと語っている。

NBAは6月26日、検査で16人の選手から陽性反応が出たと発表した。すでに何人かのスター選手は、リーグが再開される7月下旬になっても自宅待機を続ける意向を示している。24人の感染者が出たMLSは、トップ選手を欠いたまま7月第2週のシーズン再開を迎えることになるかもしれない。

6月下旬のゴルフPGAツアー「トラベラーズ選手権」では、本人またはキャディーらの感染が確認されたことから複数の選手が出場を取りやめた。全米女子サッカーリーグは約1カ月間の短縮トーナメントがユタ州で開催中だが、フロリダ州を本拠とするオーランド・プライドが参加を辞退している。開幕前に選手6人とスタッフ4人の陽性が確認されたためだ。

ヨーロッパとの決定的な違い

ヨーロッパでは、つい最近までコロナが猛威を振るっていたイタリアとスペインでさえサッカーリーグを再開することができている。1カ月以上も前にブンデスリーガが再開したドイツがとくにそうだが、ヨーロッパ各国の感染対策はアメリカとは比べものにならないほど効果的だった。

「アメリカでスポーツの再開が遅れているのはなぜか。それはウイルスをコントロールできていないからだ」と、アトランタのエモリー大学でスポーツ疫学を専門とするザカリー・ビニー氏は話す。

見通しが日に日に不透明感を増しているように見えるのは、このためだ。「アメリカは運を天に任せて『きっと大丈夫だ』という希望にすがりながらスポーツを再開しようとしている」と、エモリー大学公衆衛生大学院のビニー氏の同僚、ニール・ガンディ氏は語る。「しかし状況は極めて厳しい。1〜2カ月前よりも悪くなっているかもしれない」

リーグ関係者が認めるように、すべての選手が競技再開の計画に納得しているわけではない。一部の選手からは自身、または家族の健康を心配する声が出ている。コロナに感染した場合、長期的に身体能力がどの程度低下するのかといったことを気にしている選手もいる。

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