需要回復が遅れる電力業界、投資負担増加により収益性と財務の改善は鈍化する見通し《スタンダード&プアーズの業界展望》
図表1:電力需要実績 用途別電力量 対前年伸び率(%)(電力10社計)
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【出所:電気事業連合会】
原子力発電所の稼働率の大幅な改善なく、業績や財務に影響
国内の商業用原子力発電所53基(運転終了後の浜岡原発1、2号機の影響を除いたベース)の08年設備利用率(稼働率)は60.0%であり、07年の60.7%とほぼ同程度で、過去10年間では2番目に低かった。07年7月の新潟県中越沖地震後、東京電力柏崎刈羽原発の全7基の運転停止が続いたこと(1月18日現在、7号機が商業運転を開始し、6号機も試運転中)が大きく影響している。原子力発電所の長期運転停止は、化石燃料の使用量の増加から、業績や財務面への影響も大きくなることが多いため、格付けへの影響が生じることもある。実際、東京電力の格付けは、柏崎刈羽原発の原子力発電所の運転再開まで時間がかかり、業績や財務面へのマイナス影響が大きいと判断し、アウトルックを「ネガティブ」としている。
東京電力の柏崎刈羽原発の一部、北陸電力の志賀原発の運転再開によって、10年の原子力発電所の稼働率は向上すると考えているが、2000年前後の稼働率80%程度を回復して、この水準を安定的に維持していくには時間がかかるとみている。原油価格が再び高水準となりつつある中、運転停止中の原子力発電所の運転再開時期は格付け上の大きなポイントとなるだろう。