社員は会社に「不公平や差別」を問いただせるか セールスフォースCEOが葛藤する社会的責任

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セールスフォースでは、社内の有望な女性を選抜してメンタリングプログラムを実施したところ、ベニオフの思っていた内容とは異なる反応が返ってきた。女性は「女性だけのプログラムへの参加は望んでいなかった。(良い意味ではなく)選抜され、まるで『矯正』すべき人間であるかの印象を受ける」というのである。

本書はさまざまな不公平、差別に向き合うビジネスパーソンにとっての実録ケースとして参考になる点も多い。営利企業はどこまで「政治的な事柄」に首を突っ込むべきなのか? SDGsへの感度が企業に問われるなか、現代的な問いである。

ベニオフは、アメリカ・インディアナ州において実質的に事業者がLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クイアー)の顧客を差別することを認める法案に対して、反対して戦うかで悩む。

「私はテック企業のCEOにすぎず、政治家ではない」とも考える。この戦いにおいて元国務長官でベニオフのメンターであるコリン・パウエルでさえ、「どこまで木に登るかは注意したほうがよい、お尻が丸見えになってしまうから」と忠告している。

日本でも普段はいい人そうな発言を繰り返していた経営者がスキャンダルで足元をすくわれることは枚挙にいとまがない。この事件の結果は本書をご覧になっていただきたいが、「バリュー(価値観)に反する問題から目を背けてはならない」というのがメッセージである。あなたの会社の経営陣の様子はどうだろうか?

会社は家族なのか?チームなのか?

あるとき、ベニオフのところに2人の女性幹部がやってきて、セールスフォースに女性などを理由とした賃金格差があるのではないかと問う。ベニオフは内心、調査をしても同一労働、同一賃金が実行されているという「勝利宣言」になると信じていた。

しかしながら、結果は予想に反するものであった。こうした内容は、あらゆる企業にとって今、調査し、対応をしなければ、採用も育成もできなくなる喫緊の課題である。

本の中に出てくる「なぜ、君のチームには女性がいないのか」という問いに対する不断の努力は参考になる。同社のエンタープライズバンキングチームの営業員の女性比率は16%から37%へと増加したという。

会社が単なるチームかまたは疑似家族か、という問いも、古くて新しい経営スタイルへの問いだが、ベニオフは「家族派」であり、「家族ではない、チームである」と明言するネットフリックスのCEOリード・ヘイスティングズの名前を出して批判していることは興味深い。

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