(第1回)CO2を出すのは悪いこと

~ビジネスパーソンのキャリアを変える価値の大転換

●「ルール」を押し付けられるだけでいいのか

 国際社会をコントロールするためのルールは大国の首脳会談などの表舞台だけで、決まるものではありません。外からは見えない長いプロセスが隠されています。

 世界ではさまざまな分野で、いろいろな会議やセミナーなど、その分野の専門家などが顔を合わせる機会がたくさんあります。そこでお互い顔なじみの人々が「あの問題はどう思う?」と意見交換を始めます。そんなやり取りを何回かするうちに「やはり、あの問題をしっかり議論する必要があるね」となります。

 そうなると「あの問題」についての正式の会議が生まれます。ここまでのプロセスは「アヒルの水かき」のように表面には表れない努力です。こんな水面下での動きが重要で、正式に会議が始まるころには中身は大方固まってしまいます。ですから、「アヒルの水かき」の仲間に入るのか、外されるのかが決定的に重要になります。

 私は国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP・FI)に参加し、世界の金融界の自主的ルール作りや、温暖化防止のための議論やプロセス作りに参加してきました。そこで日本勢のルール作りの場での存在感の無さを見てきました。恐らく他の分野でもそうでしょう。温暖化問題では、各国政府やグローバル企業が、ルール作りの主導権争いを始めています。しかし、日本は政府も産業界も存在感を示していません。

 世界の中で日本の利害をはっきりといい、世界にも貢献する姿勢もちゃんと示す。それには、早い段階からの「アヒルの水かき」をいとわぬ志とガッツが必要です。ビジネスパーソンに訴えたいのは、自発的にルール作りに取り組み、世界の議論に参加してほしい、ということです。少なくとも、そういった視点から世界の動きを見て、その動きに敏感であってほしいのです。

 温暖化への対応は「次の世代と地球を守る」という倫理上の責務です。それに加えて、ビジネスパーソン個人にとっても、生き方とキャリア形成での「将来」を左右する重要な問題なのです。

末吉竹二郎(すえよし・たけじろう)
国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP・FI)特別顧問。日本カーボンオフセット代表理事。1945年1月、鹿児島県生まれ。
東京大学経済学部卒業後、三菱銀行入行。ニューヨーク支店長、同行取締役、東京三菱銀行信託会社(ニューヨーク)頭取、日興アセットマネジメント副社長などを歴任。日興アセット時代にUNEP・FIの運営委員会のメンバーに就任したのをきっかけに、この運動の支援に乗り出した。企業の社外取締役や社外監査役を務めるかたわら、環境問題や企業の社会的責任活動について各種審議会、講演、テレビなどを通じて啓蒙に努めている。
著書に『日本新生』(北星堂)、『カーボンリスク』(北星堂、共著)、『有害連鎖』(幻冬舎)がある。
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