(第1回)CO2を出すのは悪いこと ~ビジネスパーソンのキャリアを変える価値の大転換

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(第1回)CO2を出すのは悪いこと

末吉竹二郎

●「CO2本位制」がビジネスシーンを変える

 「CO2(二酸化炭素)を出すのは悪いことだ。減らすのは良いことだ」。

 地球温暖化が危機的な状況に向かう中で、新しい価値観が生まれました。この明瞭かつ単純な座標軸が地球社会のあらゆる場所で、そして全ての局面で適用されることになります。21世紀の人々の生き方、そして当然にビジネスのあり方を根本から変えていきます。

 CO2を増やすことは悪いことですから、そんな企業は消費者から嫌われ、資本市場からも敬遠されます。一方、CO2削減に取り組む企業は歓迎されます。言うまでもなく、そこで働く人々の人生をも変えていくことになります。この現実を、私は6回の連載でビジネスパーソンの皆さんとともに、考えたいと思います。

 毎日の情報の洪水の中で、表面的な出来事ばかりを追っているとなかなか気付かないことがあります。その一つが「21世紀の国際社会を運営するルール作りが進行中」という事です。その中心にあるのが「地球温暖化問題」です。いま世界で多くの人々が「CO2を減らさなければ、未来はない」という強烈な危機感を共有し、具体的な行動を始めました。

 私の造語ですが、地球社会はいま「CO2本位制」に入りました。使えるCO2の排出量の大きさが人間活動や経済活動の大きさを決めてしまう時代に入り、人類は地球環境が許す範囲内でしかCO2を排出できなくなりました。かつての「金本位制」の時代には、国家の金の保有高が通貨発行量、ひいては経済の規模を決めました。それと同じように、限られたCO2排出量の下で経済活動が制約を受け、その条件の下で利益やベネフィットを極大化する競争が始まったのです。

 CO2本位制の下では「パラダイムの逆転」が数多く生れます。これまでは「good」だったものが「bad」になります。その一例を示しましょう。「CO2を大気汚染物質とみなす」という判決が、米国連邦最高裁判所で2007年4月に下されました。この訴訟はカリフォルニア州政府などが原告となり、連邦政府に自動車の排気ガスに含まれるCO2を規制すべきだ、と主張した訴訟での判断でした。

 ブッシュ大統領の姿勢だけを見ていると「米国は温暖化対策に後ろ向き」と捉えがちですが、実態は違います。やがて米国ではこの最高裁の判決に沿った動きが活発になります。そうなると自動車産業はもとより、多くのビジネス、更には世界各国にこの判決の影響は及ぶでしょう。

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