阪急阪神百貨店が「劇場型」ECを標榜する狙い エイチ・ツー・オー リテイリングの新社長に聞く

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――やはり、消費者の購買行動は大きく変わるのでしょうか?

今回のコロナ禍で起きて、今後も定着しそうなことは3つあると見ている。

1つは、「ステイホーム」に伴う需要だ。外出自粛が続く中で、在宅消費が見直されて、生鮮食材を使用して家の中で時間をかけて調理する需要が膨らんだ。より価格の安い商品を求める節約志向も顕著になった。

さらに、ホームセンターで園芸用品や手芸用品が売れた。コロナをきっかけに、家の中の暮らしの充実とか楽しみ方という、新しい基盤ができた気がする。身の回りを充実させる傾向は、今後も続くのではないだろうか。

あらき・なおや/1957年生まれ。京都大学経済学部卒業後、1981年阪急百貨店入社。2004年同社執行役員。2008年阪急阪神百貨店執行役員、2012年3月代表取締役社長。2012年6月エイチ・ツー・オーリテイリング代表取締役、2020年4月に同社社長就任。写真は2018年(撮影:今井康一)

2つ目は、心の豊かさに対する意識の高まりだ。テレワークが促進され、(移動など)無駄な時間が減って今までより時間に余裕が持てた分、消費者はいろんなことに考えを巡らせただろう。

家族とは何か、何のために働くのか、社会の役に立つというのはどういうことか、そういうことを考えたのではないか。働き方改革やSDGs(持続可能な開発目標)などに対する意識が一段と高まったように思う。

3つ目は、本格的なオンライン社会への移行だ。いずれそうなると見られていたが、移行スピードが3~4年ほど一気に早まったと、強く感じている。

デジタル化をスピードアップさせる

――エイチ・ツー・オーはこれまで「超本店構想」を打ち出し、阪急と阪神百貨店の両本店を軸にしたリアル店舗を重視する戦略でした。今後はデジタルシフトを進めるのですか?

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

オンライン社会への移行が一気に進むとなれば、当社も明らかにそこへシフトチェンジしていかなければならないと、強く思っている。

リアル店舗の魅力があってこそのオンライン展開だと考えており、店頭のほうは少し手を抜くということではない。阪急うめだ本店も阪神梅田本店も店頭でないと体験できない魅力の開発、コンテンツの開発には引き続き注力していく必要がある。

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