香港市民を救え!開き始めた台湾の保護傘計画 人権派弁護士や牧師が活動家の自活を支援
4月、香港の抗議者にもう1つ明るいニュースが入って来た。かつて香港で営業し、中国政府に批判的な「禁書」を扱っていたことで、閉店に追い込まれた「銅鑼湾書店」の店主・林栄基さんが台北市で店を再開させたのだ。
だが、台湾に来てすべてが順調というわけではなかった。4月23日の夜10時、取材班は開店が2日後に迫った銅鑼湾書店にいた。書店は雑居ビルの10階、小ぢんまりとした店だ。実は、林さんはこの数日前、何者かによって赤いペンキを浴びせられるという被害に遭っている。台湾にも林さんらへの妨害勢力が存在するが、林さんは恐れない。彼のしわくちゃになったカバンには「書枱不屈膝(本棚は屈服しない)」という思いが記されていた。
「元々、カナダに行こうと思っていた。しかしカナダに行ったところで何ができるのか。台湾なら本屋をすることで抵抗できる」と、林さんは台湾に来た理由を話す。店の開店資金はクラウドファンディングで募った。彼のもとに600万台湾ドル(約2100万円)が集まったが、本棚や書籍の購入などに資金の約半分が消えたという。林さんは冗談を交えて言う。「この店は方角がよくない。香港人は風水を気にするが、北向きは商売には向いていないんだ」。
傷ついた抗議者たちの道しるべ
林さんは、いま店を開くことは以前とは異なる責任があると考えている。「香港では自分の金で店をやっていた。しかし今は寄付してもらった金だ。私はただの金の管理を託された管理人なのだと思う。とにかく、もう後戻りはできない。もし辞めてしまったら、香港の若者に示しがつかない」。
林さんは生涯、香港に戻ることはないと考えている。しかし、「人生には、やらなければならないことがある」と覚悟を見せた。そして、林さんは笑いながら入口のほうにある児童書コーナーを見せてくれた。「児童書がない本屋などありえない。児童書がない世界は本当につまらないものだ。本というのは次の世代に伝えるものなのだから」。
銅鑼湾書店の林さんとイヴァンさんら保護傘の若者たちの年齢差は40歳以上だ。しかし、同じように香港を憂い、両者が持つ使命感は日々重くなっている。彼らが願うのは台湾での一連の活動が暗闇の中の蛍火のように、傷ついた抗議者たちの道しるべになってほしいということだ。
イヴァンさんは「私は台湾に来られたことを感謝している。ここがとても好きだ」と話した。だが、どんなに安らげる場所であっても、イヴァンさんは台湾を安住の地とすることはできないという。「私が望む安心とは、(香港の)友人と酒を飲みながら楽しく過ごすことだと思う。(自身が台湾に渡ったことは)とても後ろめたい。今は死ぬ気で勉強しなければならないと、自身に言い聞かせている」。彼らにとって台湾へ逃れたことは決して敗走ではない。イヴァンさんは「いつも香港を思っている」と話した。(台湾『今周刊』2020年5月4日)
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