トヨタが「サポキー」で臨む安全装置の新境地 ペダル踏み間違いを減らす新システムを発売

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標準装備の通常キーではなく「サポキー」を使って開錠・始動すると、ドライバーが一定の条件を満たした状態で急アクセル操作をした場合、車両が踏み間違いであると判定し、加速を抑制する。センサーによる障害物の検知ではなく、ドライバーの操作の仕方と状況のみで踏み間違いかどうかを判定するのが、これまでのシステムとの違いだ。作動条件は以下のとおり。

・低速走行時(30km/h以下)であること
・アクセルペダルの操作速度が急であること
・アクセルペダルの操作量が大きいこと
・登り坂でないこと
・直前にウインカー操作がないこと
・直前にブレーキ操作がないこと

これらすべてが当てはまる状況でドライバーが急なアクセル操作をすると、踏んだ分だけ加速せずに、抑制される。

例えば、交差点で右折待ちをしていて、対向する直進車が途切れた瞬間に発進するため急なアクセル操作をした場合、直前にウインカー操作があるため、踏み間違いとは判定されず、加速は抑制されない。また、前方の交差点が赤信号のため停止すべく減速したものの、直前で青信号に変わり再度加速しようと急なアクセル操作をした場合には、直前にブレーキ操作があるため、踏み間違いとは判定されない。

意図しない加速抑制が行われないように、作動にはさまざまな条件を設定している(写真:トヨタ自動車)

このようにドライバーが「加速したい」と思っているときに加速できない状況に陥らないよう、多くの作動条件を設定している。

とはいえ、ドライバーの意思に100%合致した動きができるわけではなく、ドライバーが本当に急発進・急加速をしたいと思ってアクセルペダルを速く深く踏んだ場合に作動する可能性も、ゼロではない。そのため、ブレーキ制御までは入れないほか、アクセルペダルを踏み続けると緩やかな加速ができるよう設定されている。

標準装備ではなくオプションとした理由

自動車メーカーは長年、できるだけドライバーの意思どおりに動かすことができるクルマの開発を目指してきた。われわれユーザーもそれこそが安全であり、また高性能なクルマだと評価してきた。メーカーにとってドライバーの意思(急なアクセル操作)に反した挙動をする可能性がある機能を商品設定するのは、簡単ではなかったはずだ。

これについてプリウスチーフエンジニアの田中義和氏は「社内で多くの議論を重ねましたが、(サポキーを作動させることで)ごくまれに加速したくてもできない可能性を受け入れてでも、踏み間違いによる事故を回避できるメリットを優先した装備が必要だと考えました」と話す。

そうした商品特性を踏まえ、標準装備ではなくディーラーオプション設定としたという。オプション装備としてわざわざ選んだ時点で、商品特性に同意したことになるのだ。もちろん、サポキーを選んでも、標準装備のキーを使えば加速を抑制されないこれまでどおりのプリウスとして使用できる。

通常キーとサポキーを使い分けることで、運転に不安があると自覚するドライバーが自らサポキーを選ぶケースとともに、高齢ドライバーが運転を続けることに不安を抱く家族が、免許返納などを提案する前段階として、サポキー(付きの車両)を渡すようなケースも想定しているのだ。

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