TBSの「再放送」にハマりまくる中高年の目線

昭和の番組で掘り起こされたテレビの新需要

スタジオの中に、途方もない数のスタッフが待機、数々のセットが所狭しと建て付けられている中、俳優陣が見事に立ち回り、1時間のドラマが淀みなく進んでいくのに驚きつつ、どれほどの費用と時間と人数が投入されていたのかと考えると、気が遠くなった。

TBSも出資している動画配信サービス「Paravi」(パラビ)では、この4月から『3年B組金八先生』の配信が始まった。杉田かおるの「十五歳の母」シリーズで記憶に残る「第1シリーズ」(79~80年)と、「腐ったミカンの方程式」で有名な「第2シリーズ」(80~81年)という、『3年B組金八先生』を代表する2大シリーズがすでに配信済みだ。

こちらも改めて見ると、リアルタイムで見たときとは異なる発見や感慨にあふれていた。加えて、中学3年生の息子を持つ身として、いくつかのシリアスなテーマには身につまされる部分も多く、さらには教室の後方に、三原じゅん子と田原俊彦、近藤真彦が、学生服姿で斜めに並んでいる姿に、頭がクラクラした。

気が付いたら「第1シリーズ」は全話コンプリート、卒業式のシーンでは、不覚にも感涙、現在「第2シリーズ」に入ったところである。もうすぐ「腐ったミカンの方程式」の主役となる加藤優(直江喜一)が転校してくる――。

昭和作品で掘り起こされた再放送の需要

その「Paravi」ではドラマ史に残る傑作、山田太一脚本『岸辺のアルバム』(77年)も配信されていたので、どうせ月額料金を払うならということで見始めたら、こちらにもまたハマってしまった。30年ほど前の再放送で見たときは、受験生・国広富之の視点で見ていたが、今はどうしても、商社で若手社員に突き上げられる杉浦直樹の視点で見てしまう。当時40代の八千草薫がひたすら美しい。あの壮絶な最終回までもうすぐだ。

ドラマだけではない。周囲のコアな音楽ファンの間で大きな話題となったのが、CSの「TBSチャンネル2」で始まった『ザ・ベストテン』の再放送である。初回放送(6月20日)は80年12月25日の回を、まるごとオンエア。近藤真彦の初登場回(3位『スニーカーぶる~す』)。2位は、まだ幼い顔立ちの松田聖子『風は秋色』で、1位は凛とした五輪真弓『恋人よ』。

驚いたのが、若き久米宏と黒柳徹子の速射砲のようなトークだ。スピーディーかつユーモラス、それでいて知的な語り口は、それそのものが番組の「顔」だったことを痛感させられた。

コロナ禍の中、気が滅入る内容ばかりのニュースやワイドショーが続く中、人々はドラマ・アーカイブの魅力に目覚めた。「新作が無いからしょうがなく再放送を見る」のではなく、「いい作品は、何度見てもいい」ということに気づき始めている。

その流れの先には、まだ比較的テレビ離れしていない中高年層による、もっとコアなアーカイブ需要があると見る。それは80年代以前、つまり昭和のアーカイブをノー編集で流す「まるごと再放送」需要ではないか。

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