日本の「交通革命」、欧州のMaaSにはほど遠い コロナ禍でテレワークやマイカー通勤が浸透
観光需要について海外では、スイス政府など多くの組織や団体が、完全に回復するのは2022年という数字を出している。治療薬やワクチンの供給が始まったとしても、マインド面で旅行を控えておこうという人が残るためだろう。また国内旅行でいえば地方の通勤同様、感染リスクを避けるために公共交通の利用を控え、マイカーやレンタカーでの移動を選ぶ人が出てきそうだ。
訪日外国人観光客(インバウンド)については、IATA(国際航空運送協会)が5月、2019年の水準に回復するのは2024年になるとの見通しを示している。IATAによれば入国時の隔離措置などを敬遠している人が多いという。
いずれにせよ、大都市か地方かによらず、しばらくは公共交通の利用者が回復する見込みは薄い。とりわけ地方のバスやタクシーは、地域交通だけでは経営が成り立たないことから、インバウンドを含めた観光需要を収益の柱にしていたところが多かった。しかし日本政府観光局によれば、4月と5月の訪日外客数はいずれも前年同月比マイナス99.9%であり、苦境に陥っている事業者は多い。
日本モビリティ・マネジメント会議は、今回のコロナ禍で公共交通は最低でも総額3.5兆円の減収と試算しており、8月中旬までに事業者半数が倒産の危機と発表している。
欧米では公的支援も
こうした状況下で、必要とされるのは国の支援だろう。欧米諸国はいち早く動いており、自動車中心社会とみられがちなアメリカでも4月2日、感染拡大で深刻な影響を受けている公共交通機関に対し、総額250億ドルの緊急支援金を交付するとしている。
日本では4月20日、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」が閣議決定し、地方公共団体が地域に必要な支援をきめ細かく実施できるよう、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」を創設した。ただしこの交付金は地域経済全般にわたる対策で、交通限定ではない。
しかもこれだけでは到底足りないという意見が多く出たことから、6月12日に成立した第2次補正予算では、前述の交付金が2兆円上積みされるとともに、地域の鉄道やバス、離島などへの航路や航空路を対象とした「地域公共交通における感染拡大防止対策」として138億円が盛り込まれた。
こうした交付金や補助金は、地方公共団体が自発的に申請して、初めて受け取れるものである。筆者が先日記事にした長野県上田市のように積極的に申請を行う自治体もあるが(2020年6月16日付記事「橋崩落の上田電鉄別所線『市民パワー』で復活へ」参照)、地域交通の実情を把握していない自治体では申請が行われず、最悪の結果に行き着くおそれもある。
またこうした交付金や補助金は、未来永劫に続くものではない。つまり交通事業者は交付金や補助金で苦境を凌ぎつつ、移動の変化に見合ったサービスに組み替えて行くことが求められる。
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