学生バイトにしわ寄せされる社会の強烈な矛盾 コロナ禍で露呈、高すぎる学費と奨学金頼み

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学費の負担が増えたことを背景に、働く学生の比率は年々増加している。大学や短大など高等教育の在学者のうち、就業者比率は2012年の28%から2019年には46%に増加している(「労働力調査」を基に都留文科大学の後藤道夫名誉教授が集計)。一方で、仕送りなどの家庭からの給付は減っている。日本学生支援機構の調査によると、2000年には年間144万円ほどだった家庭から大学生への仕送りなどの給付額は2016年には118万円に減少した。

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もう1つは奨学金頼みで大学に通っている学生も多いことだ。貸与型の奨学金の利用者は2018年で94万人。約3人に1人の学生が、返済が必要な奨学金という名の「借金」を背負っている。だが、卒業後に安定した収入を得られる保証はない。「借りれば借りるほど未来の自分の首をしめてしまう」(大学4年生の女性)と、利用をためらう声は少なくない。

全国大学生活協同組合連合会の調査によると、大学生の1カ月の収入における奨学金の借入額はここ10年間で減少傾向にあるが、それを穴埋めするかのようにアルバイトの収入額は上昇している。

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教育費や奨学金問題に詳しい中京大学の大内裕和教授は、「(奨学金の返済難が社会問題化して)返済を恐れて容易に使えない状況になっている」と語る。学生がアルバイト収入に頼らざるをえない状況は、「アルバイト代が家計補助だったことの多い1980~90年代以前とは様相が異なる」(同)。

労働者としての権利は軽視

このように学費の高騰や家庭からの給付の減少、奨学金の借入金額の抑制を背景に、学生は簡単にはアルバイトを辞められない状況にある。それにもかかわらず、学生は労働者としての権利は軽視されている。

学生ユニオンの尾林哲矢代表は、「何の説明もなく休業手当が十分に支払われず、学生は雇用保険にも加入できない。『学生だから、労働条件を変えてもよい』という、ブラックバイトの問題が根底にある」。

働かざるをえない環境にある人が増える一方、働き手としての立場は弱い。こうした矛盾が、学生の学ぶ権利を脅かしている。

大学院への進学を目指す20代男性のBさんは大学卒業後、「親には頼らず学費と生活費を賄いたい」と、学習塾でアルバイトをしながら学費を貯めている。しかし、緊急事態宣言後から約1カ月間、塾は休校となり、その間の休業手当は支払われていない。

Bさんが働く「英才個別学院」は関東で100教室以上を展開し、講師の大半は学生中心のアルバイトだ。Bさんは、アルバイト講師全員の休業手当を求め、団体交渉を申し入れたが、運営側は手当の支払いを拒否している。

「学費のために貯金していたお金を切り崩しているため、進学にも影響が出る。声を上げなければ、当然の権利があやふやになる」とBさんは言う。

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