フェイスブック「リブラ」が犯した致命的なミス 「デジタル通貨」覇権争いに突如起きた異変
昨年6月、フェイスブックが独自のデジタル通貨「リブラ(Libra)」の発行計画を公表。「これまで銀行口座を持てなかった金融弱者を救済する」という美しい大義名分と、ペイパル、イーベイ、VISA、マスターカードなどそうそうたる企業が「リブラ協会」への参加を表明したことで、フェイスブックが一気にデジタル通貨の覇権を握るのではないかという見通しが世界中に広がりました。
あれから1年、リブラ計画の動向を追い続けてきた筆者に浮かんできた疑念は「フェイスブックは、実はもうリブラを諦めたのではないか?」ということです。そして、今月15日にフェイスブック傘下のメッセージアプリWhatsApp社が、ブラジルで「ワッツアップ・ペイ」(WhatsApp Payment)という電子決済サービスを始めるというニュースを知り、疑念が確信に変わりました。
もしフェイスブックが本気でリブラを発行するつもりなら、「ワッツアップ・ペイ」などという中途半端な電子決済サービスを別に始める必要はありません。少なくとも上層部のレベルでは、昨年公表されたリブラ計画にうたわれていたような、世界の決済シーンに革命を起こすようなデジタル通貨の発行は、諦めつつあるのではないでしょうか。
リブラはなぜ「集中砲火」を浴びたのか
なぜフェイスブックはリブラを「諦めた」のでしょうか? 筆者の新刊『アフター・ビットコイン2:仮想通貨vs.中央銀行「デジタル通貨」の次なる覇者』から、ポイントをご紹介したいと思います。
リブラ計画の「変調」が明らかになったのは、昨年10月にスイス・ジュネーブで開かれたリブラ協会の設立総会のときでした。
この総会の直前に、リブラ協会の設立に参加予定であった28社のうち、ペイパル、イーベイ、ストライプ、VISA、マスターカード、メルカドパゴ、ブッキング・ホールディングスの7社が相次いで不参加を決めたのです(さらに今年1月には携帯電話大手のボーダフォンが脱退)。
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